砂型鋳造から機械加工まで一貫して請け負う「試作屋」が自動車メーカーに支持される理由

自動車をはじめとする製品開発の現場では、試作品を用いた性能検証項目も多岐に渡るため、一つ一つ課題を解決するために何度も試作を繰り返す必要があります。試作・検証を1サイクル回すだけでも複数の工程があり、多大な時間と労力がかかります。

そのような中で、高精度な試作品のスムーズな製作は、製品開発において競合優位に立つための重要な要素の一つです。確かな加工技術を備え、試作品製作の全工程を一貫して並走してくれる試作パートナーが求められています。今回は、アルミや鉄系材料の鋳造を中心とした加工技術を強みとする株式会社プロト(以下、プロト)の現場に潜入し、自動車をはじめとした様々なメーカーから主要部品の試作品製作を依頼される理由を探ってきました。

設計、製造、検査、測定まで、全ての試作工程を一貫して対応

多くのメーカーに頼られる株式会社プロトの長谷川社長
多くのメーカーに頼られる株式会社プロトの長谷川社長

「弊社はアルミや鉄系材料の砂型鋳造やその機械加工を得意としています。しかし、我々の売り物はあくまで『試作品』なので、鋳造や機械加工はその工程の一部に過ぎません。試作品製作を担当されているお客様からは、『工程ごとに複数の加工業者に委託しているので調整業務が負荷になっている』というお悩みの声をよく聞きます。我々は一貫対応できる『試作屋』として、お客様が設計や検証業務に集中でき、かつ、製品開発のリードタイムをできるだけ短縮できるようサポートすることに努めています」

実際に設計から測定までトータルで委託できる企業は、貴重な存在ですね。

「試作品は単に試しに作ってみるものばかりではありません。開発中の製品の性能検証を目的とした試作も多く存在します。自動車部品を例に挙げると、衝突試験ひとつとっても様々な条件下で検証するために100台以上の試作品を製作します。したがって、余計なノイズを出さないためにも試作品に求められる品質は量産品より高く、結果に応じて何度も設計変更を繰り返します。これまで1製品あたり、10回~30回程の設計変更を繰り返す例も少なくなく、EVのモーター部品の試作案件では3ヶ月で約300台製作したこともあります。このような研究開発の過程に並走してお客様のサポートを行うのが我々の『試作』です」


木型とRP(Rapid Prototyping)を用いた砂型を駆使し、複雑形状でも高精度な加工を効率よく提供可能

木型の写真
木型の写真

次に鋳造技術について伺いました。鋳型には、木型を用いた砂型とRP砂型の2種類を使い分けているそうです。

「木型はケミカルウッドという経時劣化しにくい樹脂で作成しています。木型は砂を込めた後取り出す必要があるので、抜きやすい組合せを設計する必要があります。ミッションCVTを例に挙げると、6型以上の木型を組み合せて成形しています。お客様から頂いた図面やデータを元に試作品の製作手法・プロセスをお客様にご提案し、要望をお聞きしながら調整します。最終的には試作品製作のためのデータ設計を行います」

「木型はデータをもとにマシニングで削って作成していますが、刃物で削れない部分はノミをつかって手作業で削る必要もあり、経験のある職人の技術が必要になります。設計や成形にある程度の時間とコストがかかりますが、一度木型が完成してしまえば、同じ型を用いて複数の砂型を作成できるので、効率は上がります」


砂込め作業の様子
砂込め作業の様子

「木型ができたら、砂で型取りを行います。砂を込める時は力を入れすぎると、固まり過ぎてガスが抜けなくなるため、微妙な匙加減が必要です。試作品の形状を理解した上で、どこから砂を詰めるのか正しく判断する必要があるので、経験が求められる作業です。鋳造品を取り出した後の砂は、機械にかけて細かく崩し再利用が可能です」

RP砂型のレーザー焼成の様子
RP砂型のレーザー焼成の様子

プロトでは3DPを活用したRP砂型も活用しています。約15年に渡って数々の試作に活用してきたので業界内でも経験値はトップクラスだそうです。実際に砂型をレーザー焼成しているところを見せていただきました。

「レーザー焼成タイプの3DPは約0.2mmの厚みで砂を敷き、レーザーを当てた部分のみ固まる仕組みを利用して積層造形しています。RP砂型は積層造形なので木型のように抜け勾配を考慮する必要もなく、砂を込めて型を取る工程も不要なので、木型に比べると設計の自由度やリードタイムに強みがあります。最近ではさらに高速で砂型を造形できるインクジェットタイプの3DPが主流で、弊社でも取り入れています」

求められる量とスピードで木型とRP砂型を使い分けているそうです。特に複雑な形状の場合や、自動車の部品のように試作品の設計変更を何度もかけながら開発を行う場合には3DPのメリットが活きそうです。


量産を見据えた、提案型の試作品製作

「RP砂型を用いれば、肉厚の制限も少ないので鋳造の自由度は高くなりますが、量産時に全て再現できるとは限りません。試作では上手く成形できたのに、量産時には湯がまわらないといったケースもあり得ます。一般的に量産時にはダイカストや金型鋳造を用いられる場合が多いので、それらの加工法の特性も考慮した上で、設計のご提案を行うこともあります」

量産まで見据えた、実現可能な試作品の製作ということですね。

「実際に量産メーカーさんに試作段階から入っていただき、量産時の要望を聞きながら試作を行うこともあります。例えば、『この設計だと実際の生産ラインで中子を入れるのに何秒かかるのか』といった、量産時にはとても重要となるポイントを試作の段階で押さえることができます」

お客様のスムーズでスピーディな製品開発には、プロトのオープンな工場が一役買っているようです。


鋳造を知り尽くしているからこそ実現できる高品質な機械加工

機械加工の様子
機械加工の様子

機械加工は、縦型・横型マシニングセンタをはじめ5軸制御マシンなどの最新設備を備え、フライス削りや中ぐり、穴あけ、ネジ立てなど様々な加工に対応しています。最近は製品形状がますます複雑化しているので基本的にCAMを用いて作成したプログラムで機械を動かしているそうです。

「弊社は、鋳造品はもちろんアルミや鉄の無垢材の切削も承ります。鋳造品の特徴として、加工品に平面がなく、基準決め、微妙な傾きや偏肉の調整、芯出しが難しいといった課題があります。これらは、鋳造品に合わせた治具を設計製作することで解決しますが、鋳造品特有の熱ひずみがあるので、最適な穴の位置の決めるにはコツがいります」

「お客様から要望があればアッセンブリ加工も行います。納品後すぐに組立てて、実験に着手できることにメリットを感じていただいています。例えば、測定センサー用の穴開けや、穴にホースを差し込むニップルの溶接などにも対応します。自動車のターボチャージャーなどは溶接ニーズが多いですね。加工業者同士横のつながりがあるのでだいたいのご相談に応えることができます」

メーカーでは通常あまり外注しないようなエンジンなどハイブリットなどの駆動系の案件を多く受注していることも、プロトに寄せられる信頼の証と言えますね。


プロト独自の製作工法により短納期を実現

納期短縮例(株式会社プロトHP)
納期短縮例(株式会社プロトHP)

プロトHPによると、独自製作工法を用いることで四気筒シリンダーヘッドの場合、通常の半分以下の期間で製作できるそうです。この独自工法の中身について一部お聞きすることができました。

「まず、鋳造加工の工程では、先ほどご紹介した木型を用いた砂型とRP砂型を組み合わせることで効率的に製作が可能です。RPを用いると砂型を1つ完成させるまでにかかるスピードが木型に比べて早いですが、木型は一度作成してしまえば、2つ目以降の砂型を作るのは早いです。複数の試作品が必要な場合は、RP砂型を用いた鋳造と並行して木型を作成します。木型が完成したら、木型を用いた砂型鋳造に切り替えればより早く納品が可能になります。また、複雑な形状を含む部品などは、1つの部品の中で木型を用いる部分とRPを用いる部分に分け、組合せて砂型を作ることもあります」

鋳型製作のリードタイムを削減することは短納期を実現する上でポイントになるのですね。

「機械加工まで自社で完結することも、納期短縮に大きく効いてきます。アセンブリまで弊社で対応することで試作品トータルの製作期間を圧縮できています。他にも納期短縮のためにさまざまな工夫を行っています」

工場内を見学させていただき、コンパクトな敷地内ですべての工程を一貫して対応することが最も効率的な形であることを実感しました。


全数検査で寸法精度を保証

三次元測定機
三次元測定機

品質を保証するため、最新機器を導入した各種測定に力を入れています。

「試鋳の段階では、設計通りの形状に成形できていること、傷などが発生していないことを非接触測定器で検出します。薄肉の設計の場合、溶湯がうまく回らないこともあるので確認を行います。内部欠陥は、CTによる測定や試鋳品を5mmピッチで薄切りに切断して巣の有無を確認します。CTでも0.5mmほどの大きさの巣を検出することができます。これらの検証を行いながら鋳造の条件を決定します」

「完成した試作品の寸法精度は3次元測定器で全数検査を行っています。図面上、幾何公差が指定されている箇所は全て自動で測定し、基準を満たしているもののみを出荷しています。熱処理を行う場合は処理前後の寸法を確認しています」


幅広い用途の主幹部品に対応

トランスミッション
EV専用トランスミッション
バルブボディ
ギアボックス
水冷ケース
クラッチハウジング

形状が複雑で製品性能を左右する重要な部品の引き合いが多いのでしょうか。

「主要部品は他社との差別化を図る重要な部品であることが多いからか、何度も設計・試作・検証を繰り返す案件が多いです。弊社で対応可能なサイズは最大500mm角くらいで、数は1つから対応しています。一番多いのは自動車の開発フェーズの試作です。EVやハイブリット車の専用の部品などは当初より試作を任せていただいています。他にもF3のエンジン・トランスミッションの試作も行っています」

<表1>案件内容内訳

 製品カテゴリ 部品例
自動車 ターボチャージャー、トランスミッション、シリンダーブロック、シリンダーヘッド、シリンダーヘッドカバー、クラッチハウジング、ミッションカバー、ギアボックス、EVのケース関連、モーター水冷ケース
産業機械 工業用ポンプ、建機部品
医療機器 医療機器、医療検査機器
その他 照明などのインテリア

 

「その他、産業機械の試作案件はコンスタントにいただいています。産学連携で医療機器の開発にも携わっています。機能部品だけでなく、インテリアなどのクリエイティブ領域も面白いですね。お客様にはどんな用途であってもご相談いただきたいです」

今後の展望

息の合った注湯作業の様子を見学させていただきました
息の合った注湯作業の様子を見学させていただきました

これまでアルミや鉄系材料の砂型鋳造品をメインに試作を行ってきたプロトですが、今後はアルミや鉄に限らず多用な素材に対応していきたいと長谷川社長は言います。

「点数や量が少ない試作は積極的に請け負う鉄系の鋳造加工業者が年々減っているという声を受けて、4年ほど前に鉄系材料の鋳造を開始しました。引き続き、新しい素材を用いた試作も積極的に取り組んでいきたいと考えています」

海外展開にも力を入れていれており、中国長春の企業と合弁会社を設立し、日本で加工した鋳造品を中国で機械加工し、現地のお客様に納品しているそうです。

「中国のメーカーはスピード感があり新しい取り組みにも積極的なのでよい刺激になっています。今後さらなる海外展開を見据えて、アジアを中心とした外国人の従業員を迎え育成しています」

手間のかかる試作品づくりを歓迎し、現状に満足せず常に挑戦を続けるプロトの技術進化と領域拡大に注目です。


株式会社プロト
産業用や工業用の試作品製作を一括して引き受ける試作品づくりのプロ集団。独自の製法により短納期・高品質を実現。各工程に専門家を配置し、徹底した品質管理を行うことで高精度を追及している。製作内容に応じてフレキシブルにラインを組み換えることで、スピード化、コストダウン化、量産化など、顧客のあらゆる要望に応える。
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