歴史の長い北陸のものづくり展示会『MEX金沢2019』でみた表面加工の独自技術

展示会や見本市の歴史は明治時代にさかのぼりますが、CEATEC JAPAN(当初は社団法人電子機械工業会・主催)や東京モーターショー(日本自動車工業会・主催)など、ものづくり系で定期的・年次的に行われている展示会のほとんどは戦後に始まりました。その中でも、2019年に第57回を迎えたMEX金沢(機械工業見本市金沢、主催:一般社団法人石川県研鉄工機電協会)は、北陸地方で連綿と続けられてきた歴史の長い展示会といえます。

MEXとはMachinery & Electronics Exhibitionのことで、第1回目は1963年5月でした。石川県機械工業近代化展から現在の名称になったのは1985年です。金属工作、加工機械、産業用ロボット、切削機械などの新製品を紹介する見本市としては現在、本州日本海側で最大級の展示会になっています。

そんなMEX金沢が、2019年も5月16〜18日に金沢市にある石川県産業展示館で開催されました。北陸を中心に216企業・団体が出展し、3日間の来場者総数は5万8,795人と、2018年より2,000人以上多くなっています。盛況だったMEX金沢を取材し、その中から表面加工で独自技術を持つ3社をピックアップしたのでご紹介します。



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微小サイズのメディアが磨く磁気研磨法

株式会社プライオリティ(東京都大田区)は、磁気研磨方式によってバリ取りなどの研磨加工をする企業です。磁気研磨法とは、永久磁石を回転させる装置の洗浄液中で、多数の磁性を帯びた針状メディアが高速流動しながらワークの外周や内面、凹凸部分、溝、孔などに入り込み、銅やアルミ、マグネシウムなどの金属のほか、硬質プラスチックの微細微少なバリ取りと仕上げをする加工方法のことです。

金属加工には必ずバリが生じます。これは現在の技術では宿命ともいえる現象で、複雑な形状やパイプ形状のワークのバリ取り、また複合素材で金属部分のみのバリ取りをするのは難しい技術でした。

しかし、同社のプリティックという磁気研磨機を使った方式では、微小サイズの針状磁性体メディアが洗浄液中で高速に攪拌されて動くことで、複雑な形状のワークの隙間やパイプ内面へ入り込み、均一に研磨することが可能になります。この針状メディアは、SUS304に磁性を帯びさせたものだそうです。

<写真1>株式会社プライオリティの磁気研磨機の構造図。下部の磁気盤(永久磁石)が回転することでN極とS極が交互に変換します。洗浄水の中に入れた微小サイズの磁性体メディアは相互に影響を与え合い、N極S極に対して瞬時に鎖状に連結し、反転などを繰り返す運動によって攪拌され、ワークの表面に数万から数十万回、接触することでバリ取りや表面処理を行います。
<写真1>株式会社プライオリティの磁気研磨機の構造図。下部の磁気盤(永久磁石)が回転することでN極とS極が交互に変換します。洗浄水の中に入れた微小サイズの磁性体メディアは相互に影響を与え合い、N極S極に対して瞬時に鎖状に連結し、反転などを繰り返す運動によって攪拌され、ワークの表面に数万から数十万回、接触することでバリ取りや表面処理を行います。


ゴムや、ガラス、テフロンなどを金属と組み合わせた複合素材の部品でも、金属部分にのみバリ取りや表面処理を施すことができ、素材への影響も極力低く抑えることができるということです。ほとんどの金属素材、硬質プラスチックまで素材を選ばないのが特徴で、0.2mmから手の平サイズまでのワークが対象となります。


<写真2>黄銅切削加工品のバリ取り事例。左が処理前で右が5分後のワーク。内側のバリがきれいに取れていることがわかります。
<写真2>黄銅切削加工品のバリ取り事例。左が処理前で右が5分後のワーク。内側のバリがきれいに取れていることがわかります。

MEX金沢の展示ブースでは、実際に同社のプリティックという磁気研磨機を使ったデモンストレーションが行われていました。鉄素材の場合、ワークも磁性を帯びてしまい、磁性メディアがワークにくっついてしまうのではないかという疑問が出るかもしれません。それについては、磁場を移動させることで磁性メディアがワークから離れ、洗浄液中で波打ち際の砂のような運動を行うと説明され、なるほどと納得させられました。

微小サイズのメディアを使うため、研削力がそれほど出ず、大きなバリの除去には向いていないようですが、磁場を移動させる機種もあり、磁場をスライドさせることで長尺もののワークにも対応可能とのことです。また、同社独自の磁気研磨方式によるバリ取り技術は、日・欧米で特許、欧州CEマーキング認定も取得済みとなるようです。

同社は、これまでも各地の展示会へ出展してきたそうですが、今回のMEX金沢への参加は3回目です。石川県や富山県、福井県といった北陸地方の顧客の掘り起こしのために出展を続け、今回もテストワークの申し出があるなど、出展した効果を実感しているとのことで、来年もまた出展する予定だそうです。


3D攪拌で変形少なく研磨

次に紹介するのは、三恵ハイプレシジョン株式会社(大阪市平野区)です。もともとは精密切削部品加工などをする企業でしたが、MEX金沢に出展していたのはバリ取りや表面研磨のための精密小型バレル研磨機です。

同社独自の技術を使った製品で、ウレタン製の容器を斜めに設置することで立体的な3D攪拌をし、そのことでワーク同士が衝突せず、微細な部品や欠けやすい材質の部品でも短時間で欠けや歪み、変形などが少なく研磨することが可能になっています。


<写真3>ウレタン製の容器が斜めに設置されていることがわかります。従来の水平攪拌では、ワークと研磨剤の質量などが異なることで上下に分離しやすくなります。しかし、3D相対運動をさせることでワークと研磨剤が常にタンクの中心へ練り込まれる運動を行うそうで、微細精密パーツや形状が複雑で絡みやすいパーツ、セラミックなど欠けやすい材質などに特化した研磨機です。
<写真3>ウレタン製の容器が斜めに設置されていることがわかります。従来の水平攪拌では、ワークと研磨剤の質量などが異なることで上下に分離しやすくなります。しかし、3D相対運動をさせることでワークと研磨剤が常にタンクの中心へ練り込まれる運動を行うそうで、微細精密パーツや形状が複雑で絡みやすいパーツ、セラミックなど欠けやすい材質などに特化した研磨機です。


この遠心バレル研磨機では、斜めに角度をつけて攪拌する水平公転傾斜方式という点が独自のアイデアだそうで、容器の中へワークと研磨剤や水、コンパウンドなどを入れ、回転させることで容器内に遠心力が発生して摺り合わせ、バリ取りや表面研磨などを行います。

小さな部品や微細な部品に特化した装置で、常にワークとメディアが接触した状態になることで、変形や欠けなどのワークへの影響を少なくし、研磨能力の向上により研磨時間を短縮することに成功しています。


<写真4>バレル研磨機による研磨前後の比較。タンクの容量は1.0ℓ×2槽から2.5ℓ×4槽まであるそうです。
<写真4>バレル研磨機による研磨前後の比較。タンクの容量は1.0ℓ×2槽から2.5ℓ×4槽まであるそうです。


この立体的な攪拌の動きの応用系として、2種類以上の粉体を均質に混ぜることのできる揺動式遠心攪拌機も販売しているとのこと。攪拌機の開発は、とある顧客がバレル研磨機に興味を持ち、研磨するよりも粉体を混ぜたいと要望したことがきっかけで試作機を作り、販売にいたったそうです。その後、粉体混合器としての市場もあるということで、バレル機の応用から攪拌機へというように技術力を高めていきました。バレルという素地があったため攪拌機の開発は容易にできたそうです。容器を斜めに設置した同社のバレル研磨機は特許取得済みです。

同社は、今後も自社開発の商品をメーカーとして責任をもって出していきたいとのこと。今回のMEX金沢には、これまでも東京や大阪などに出展してきた上で、さらに大都市以外の地方にも顧客がいるということで初めての出展でしたが、かなりの手応えを感じることができ、次回の出展も検討しているそうです。


セラミック・ブラシで挑む京都のものづくり企業

最後に紹介するのは、双和化成株式会社(京都市中京区)です。アルミナ長繊維をナノ結合させた研磨用のセラミック・ファイバーブラシやFRP製品などを製造販売している企業で、京都を拠点に日本の伝統文化を継承し、地域の繊維産業、繊維工学を素地としてその可能性を広げる技術開発をしています。

MEX金沢に出展していたのは、研磨用のセラミック・ファイバーブラシ、ファイバー砥石で、クリストンブリッスル(Cristone Bristle)という製品名のものでした。実際のデモでは金属の加工面を磨く作業を行っており、砥粒入りナイロンブラシの60倍の研削力があるといいます。7〜10μmの繊維が1,000本単位で樹脂を介して細かく緻密に束ねられているため、砥材による研磨傷を軽減させ、より均一な表面仕上げが実現できるそうです。


<写真5>左がミクロン(μ)結合とよばれる従来のセラミック繊維の断面。右のクリストンブリッスルではナノ(n)結合によって繊維断面が細かくなっていることがわかります。
<写真5>左がミクロン(μ)結合とよばれる従来のセラミック繊維の断面。右のクリストンブリッスルではナノ(n)結合によって繊維断面が細かくなっていることがわかります。



こうした安定的な研削力と高回転でも折れにくい耐久性により、マシニングセンターなどの既存の設備に導入してバリ取りやツールマーク除去を自動化させることができます。これにより生産効率を向上させ、表面仕上げの自動化により加工時間を1/20に短縮することも可能だそうです。

<写真6>航空機部品(ウィングリブ)のバリ取りの事例。材質はアルミ合金で、左が研削前、右が研削後になります。切削加工後に工作機械内でバリ取りをすることで手作業の時間を減らし、コスト削減と生産効率向上につながる可能性があります。
<写真6>航空機部品(ウィングリブ)のバリ取りの事例。材質はアルミ合金で、左が研削前、右が研削後になります。切削加工後に工作機械内でバリ取りをすることで手作業の時間を減らし、コスト削減と生産効率向上につながる可能性があります。

クリストンブリッスルは、切削油を使う湿式以外にも熱を持ちにくく、乾式でも使えます。この場合はロボットなどに装着するなど、応用範囲が広い製品になっています。また、クリストンブリッスルは同社の独自技術ですが、特許出願は出さずにノウハウとしているようです。

MEX金沢への出展は初の同社。これまで展示会への出展は東京と大阪ばかりだったのを、京都に本社と研究所を構え地方支店を展開していない事情もあり、地方でも顧客を広げようとの考えから、出展を決めたそうです。展示会後にさっそく富山県の企業から引き合いがあるなど、MEX金沢にブースを出した効果を感じているとのことでした。


まとめ

北陸・金沢で50年以上続いてきたMEX金沢ですが、今回紹介したように日本全国から出展する企業が増えているようです。大都市に限らず、ものづくりの企業が地方にも多いのは当然のことでしょう。次回のMEX金沢は、2020年5月21~23日の開催予定となっています。



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文/石田雅彦

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