まさにコロンブスの卵! 超音波複合振動による接合技術とは?

INTERVIEW

株式会社LINK-US
技術部 統括リーダー
山内 基士
営業部 部長
浅香 俊介

株式会社LINK-USは、2014年8月に光行潤(みつゆきじゅん)代表取締役が横浜で起業した若い会社です。材料(ワーク)を溶融させず、同種・異種金属を高い強度で接合する安定した超音波複合振動技術が同社の独自技術です。超音波複合振動と強力超音波を利用した各種装置の受託販売やコンサルティング、特に超音波複合振動による常温接合技術とこれによる応用装置の開発や製造販売などを行っています。



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大学から生まれた世界初の接合技術

超音波は、人間の可聴域である20KHz以上の周波数範囲で、音の波が直進しやすく、強い波の力を一点に集中させやすくなります。超音波は計測や洗浄、加工、切断破砕などに応用されていますが、接合で使うこともあります。複合振動という他とは違う超音波を使った接合技術について、同社技術部の山内基士(やまうちもとし)統括リーダーと営業部の浅香俊介(あさかしゅんすけ)部長に詳しくお話をうかがいました。

<写真1>左から営業部の浅香俊介営業部長、山内基士技術部統括リーダー
<写真1>左から営業部の浅香俊介営業部長、山内基士技術部統括リーダー

────この超音波複合振動という技術はどなたが発明されたのでしょう。

浅香部長:
この超音波複合振動を使った接合ですが、神奈川大学工学部の教授で現在は名誉教授になられている辻野次郎丸先生が発明・開発したもので国内外に特許が出願されている世界初の技術です。

辻野先生は、主に強力超音波を学術的に研究し複合振動を発明しました。もともと東工大におられた豪快な先生で超音波一筋に神奈川大学で研究をされていました。辻野先生と弊社の代表である光行が一緒になって、お客さまが広く使っていただけるようにということで装置開発などをして汎用にし、販売を始めました。



────辻野先生と光行代表との関係はどのようなものでしょうか。

浅香部長:
光行はもともと機械加工メーカーにおりまして、超音波複合振動の装置を作る際の難加工を担当していました。長軸のロールを変異させずに水平を保つといった依頼加工品などの関係から、5〜6年前に辻野先生とつながりができました。

LINK-USのLINKは「つながり」、USは「ウルトラ・ソニック」、超音波のことで、超音波でつなぐ力、つながりの力を大切にしていくという弊社理念を表しているそうです。



────創業から短い期間で大きく成長しているようですが。

浅香部長:
おかげさまで、2015年に大手自動車部品メーカーへ最初に超音波複合振動による試作装置を納品させていただきました。その後、大手バッテリーメーカーへ量産試作機から量産機を納品しつつ、ライン機も稼働させ、2018年には産業革新機構(現INCJ)などからの出資を受け、大手バッテリーメーカーの国内外の工場で装置の量産がスタートしています。


超音波複合振動による接合のメリット

────超音波振動で金属同士を接合するという技術はどのようなものでしょうか。

山内リーダー:
金属同士は、真空中でゼロ接点させるというように、きれいな表面である新生面が近づくと金属結合する性質をもともと持っています。超音波による接合の技術は、金属が持っているこの性質を応用したものです。

2つの金属材料を接合したい場合、それぞれの接合面を重ね合わせ、溶接ツールというもので加圧しつつ超音波振動を加え、擦り合わせます。こうすることで、摩擦や塑性流動によって接合面のコンタミネーションが取り除かれ、新生面という金属本来の界面が露出します。



────つまり、超音波振動は、不純物を除き、接合面を平坦にするための手段なのでしょうか。

山内リーダー:
そうです。擦り合わせて接合面がきれいになることで材料同士が接触し、材料が変形して接合界面の温度が融点の1/3以上になると原子の運動が活発化します。そして、材料の新生面同士が原子のレベルまで近づくことにより、原子間結合が生じて材料同士が結合し、強い接合部を形成して接合されることになるんです。

この融点ですが、例えば約660℃のアルミと約1,080℃の銅というように融点が異なる金属同士の場合、界面の必要温度は約220℃になります。



────超音波振動による金属接合の特徴はどのようなものですか。

山内リーダー:
接合される接合面ですが、例えばアルミと銅のように異なった金属でも接合界面に不純物である合金層が作られないことがあげられます。また、原子間結合ですので、金属の組織変化もなく、機械的、電気的な特性が変化せず、ブローホールと呼ばれる気泡が発生しないというのも特徴です。

しかし、超音波を使った接合技術が広まってはきましたが、まだ解決できていない問題がありました。例えば、リチウムイオン電池ですと箔切れやコンタミネーションの影響の問題があります。

超音波を使った接合技術自体は20年以上前にできたもので、もともとバッテリー製造で多く利用されてきたそうです。そのため、バッテリーでアルミと銅などの金属接合のニーズが求められる前までは、あまり多く使われてきませんでした。そもそもニーズがあまりなかったこともあり、超音波を金属の接合で応用する技術はなかなかクローズアップされず、樹脂などの溶着や超音波洗浄のほうが先行した技術だったといいます。

<写真2>超音波接合の例
<写真2>超音波接合の例

コロンブスの卵だった複合振動

────こうした一般的な超音波振動と御社の超音波複合振動の違いはどこにありますか。

浅香部長:
従来の超音波振動による接合では、溶接ツールが直線的に往復運動をしてワーク(材料)に振動を伝えています。一方、辻野先生が発明・開発し、弊社の技術でもある複合振動では、溶接ツールの動きが円弧を描きます。

この円弧の動きを複数ではなく、1つの振動発生部から発生させているのが弊社の超音波複合振動の特徴です。振動変換器に加工された斜めスリットの溝で、斜めスリットにより前後の直線運動にねじり運動が加えられ、溶接ツールが円弧を描くというわけです。この斜めスリットは、長さも溝の深さも理論値によって決められていますが、この加工技術も難加工です。

<写真3>加工された斜めスリット
<写真3>加工された斜めスリット

────円弧を描くことのメリットについて説明してください。

浅香部長:
円弧を描くことにより振動の軌跡に折り返しがなく、その結果、従来の直線振動に比べて2分の1以下という省エネルギーでの接合が可能になります。

さらに、直線振動の数分の1から1/10というように振幅が小さいため、当社比較実験によりますが、材料へのダメージも低減されて周辺への熱影響も低減され、飛散物(スパッタ)や短絡を引き起こすバリが少なくなります。

加えて、接合の方向性がないことで、どの方向からも安定した高い強度を保つことが可能になります。ストップアンドゴー、行って来いという折り返しがなく、お皿洗いのように円弧で振動を伝えますから、ダメージを与えにくく不純物を排斥します。特に、不純物を嫌うバッテリーの接点などで強いアドバンテージのある技術になっています。


<図1>超音波接合振動での接合方法(同社の資料より)
<図1>超音波接合振動での接合方法(同社の資料より)


<写真4>使用される溶接ツール
<写真4>使用される溶接ツール


────辻野先生はどのような経緯でこの技術を発明されたのでしょうか。

浅香部長:
最初から、円弧などで振動を伝えたほうが材料へのダメージが少なくなることがわかっていたわけではなかったようです。もちろん、保持部分の設計や反射波の問題など、機械的な機構でそれを実現するのが難しかったこともあったのでしょう。辻野先生によれば、厚みのある部材を接合させるためのパワー不足が問題になっていたそうです。

そのために例えば針金などを指で切るとき、直線的な単純運動より二次元的に回転させたほうが容易に切れるように、円弧運動を与えれば同じエネルギーでもパワー不足を解消できるのではないかと考えたというわけです。単一の振動発生部から円弧という、繰り返し再現性の高い制御可能な複合振動を実現している斜めスリットは、コロンブスの卵のようなアイディアでそれを実現しています。



────超音波複合振動による接合はどの分野で使われていますか。

山内リーダー:
多く使われているのは、やはり電池やパワーデバイス、基板、半導体の後工程などの電気的接点部の金属接合です。特に、リチウムイオン電池では発火につながりかねない異物混入などの飛散物を嫌いますし、積層箔を使うタイプや集電箔タイプなどがありニーズは多いです。

また、コンマ数ミリという単位の材料をダイレクトにつけることができます。微細な接点部で溶融させてしまうと熱の範囲をコントロールできませんが、超音波複合振動による接合ではその不安がなくなります。複合振動による接合では、アルミと銅などのように融点が異なった異種金属の接合が高効率で可能になります。

また、スズメッキなどによって超音波振動による接合やマグネシウムなどの材料で、直線振動では難しいものでも複合振動では実現できるといった分野もあります。


<図2>超音波金属接合の用途例(同社の資料より)
<図2>超音波金属接合の用途例(同社の資料より)

まとめ

いままでの課題を解決する技術を発明・開発した意義は大きく、いまや多くのメーカーから問い合わせをいただいているとのこと。また、環境基準の問題で、はんだフリーの流れもあり、超音波振動の接合には今後さらに多くのニーズが見込まれそうです。それらニーズも、まだ掘り起こせていないだけで、バッテリーや半導体以外にも応用市場はほかに多く存在するのではないでしょうか。今後の市場の広がりに期待がかかります。



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文/石田雅彦

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