日本の自動車メーカーのEVに進化形が登場!〜ジュネーブ・モーターショー2019現地報告(前編)

ジュネーブ国際モーターショー(Salon International de l'Auto、通称ジュネーブ・モーターショー)は、自動車産業のないスイスで開催されるものの、富裕層が集まるエリアでの開催、オープンカーの発表にふさわしい春を控えた季節ということもあり、毎年華やかな新車が登場することで知られています。また欧州においては、その年初めて開催されるモーターショーということもあって、前年の業績発表を行うためにエグゼクティブが来場するなど、経営視点からも国際的に注目度の高いモーターショーです。

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ホンダ初の市販電気自動車(EV)「Honda e」

今年で第89回を迎えるジュネーブ・モーターショーでは、電動モビリティが続々と登場して話題を呼んでいました。日本車メーカーも、ここぞとばかりの電動車を発表しています。まずは、開幕前から話題になっていたホンダ初の市販電気自動車(EV)「Honda e」から紹介していきましょう。

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エクステリア・デザインは、ホンダ曰く、「走りの楽しさと愛着を感じる親しみやすさをシンプル・クリーンに表現」したと言います。パッと見て目を引くのは、新採用のポップアップ式ドアハンドルや、「サイドカメラミラーシステム」なる先進機能を取り入れたことにより、“シームレス”なエクステリア・デザインです。
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エクステリア・デザインは、ホンダ曰く、「走りの楽しさと愛着を感じる親しみやすさをシンプル・クリーンに表現」したと言います。パッと見て目を引くのは、新採用のポップアップ式ドアハンドルや、「サイドカメラミラーシステム」なる先進機能を取り入れたことにより、“シームレス”なエクステリア・デザインです。


ホンダがこのタイプの都市型EVのコンセプトを最初に発表したのが、2017年のフランクフルトモーターショーとそれに続く東京モーターショーでした。今回発表された「Honda e」はその際に公開された「Honda Urban EV Concept(アーバンイーブイコンセプト)」をベースに、量産モデルへと進化させたものです。

まったくのブランニューで設計されたEV専用プラットフォームを採用して、サイズ感の割に長めのホイールベースとショート・オーバーハングを実現しています。その結果、室内の居住性を高めると同時に、EVが活躍する街中での取り回しの良さを重視した設計となっています。

クルマの設計で最大の課題が、重量物であるパワートレインをどこに配置するか? ですが、「Honda e」ではEVで最も重い部品であるリチウムイオン電池をフロア下に収納し、電気モーターで後輪を駆動しています。1回の充電で走行できる巡航距離は200km以上を確保しており、30分の急速充電で80%までの充電ができます。

当然、最新のコネクテッドにも対応しています。室内には、直感的な操作ができることを重視した大型ディスプレイが設置されています。従来の小型車と比べると、インテリアに上質な素材を使用するなど、居住性を重視している点も特筆すべきでしょう。2019年夏に生産開始を予定しています。

もう一つ、驚くことに、ホンダは2025年までに欧州で販売する自動車をすべて、ハイブリッド、ピュアEVを含む、電動車に置き換えると宣言しました。その核となるのは、2019年に発売される「CR-Vハイブリッド」に搭載される2モーターハイブリッド機構「SPORT HYBRID i-MMD」です。


EVで独自色を出す三菱の本気

電動車では一日の長のある三菱自動車は、電動車の発表のみならず、充電設備まで包括した発表を行いました。今回ワールドプレミアされた新世代クロスオーバーSUVのコンセプトカー三菱「エンゲルベルク・ツアラー」の心臓部には、「アウトランダーPHEV」をはじめとする電動モデルに搭載される三菱独自開発のツインモーター方式PHEVシステムの技術がベースとなっています。

さらに、こちらも三菱の得意とする4輪駆動の技術と組み合わせた特徴あるパワートレインです。具体的には、2.4リッター・ガソリン・エンジンと2基の電気モーターを組み合わせたシリーズ・ハイブリッド方式を採用しています。ブレーキを踏んだ時のエネルギー回生の能力を強化し、巡航時には空気の取り入れをするグリルを閉めるグリルシャッターを設けるなど、さらなる低燃費化を施しています。

前後に電気モーターを搭載する独自のフルタイム4WDシステムでは、前輪左右の駆動力配分を制御するヨーコントロール(AYC) を採用しています。また、ブレーキ制動力、前後モーター出力の制御を統合制御して、走る・曲がる・止まるといった運動性能を飛躍的に高める車両運動統合制御システム「S-AWC(Super All Wheel Control)」の採用も、三菱の真骨頂といったところです。

前後駆動力配分の応答性が優れているのは電動車の特徴ですが、加えて、立ち上がりから最大トルクを発揮するモーター駆動ならではの加速感や、応答性の高い電気駆動ならではの悪路での操舵性の高さなどを生かした走りの魅力を引き出しています。

フル充電しておけば、最大70kmものEV走行ができることに加えて、PHEVとしてハイブリッド走行をすると、最大700kmまで巡行距離を伸ばせます。コンセプトカーなので、詳細な出力は発表されていませんが、大容量バッテリーをフロア下に格納し、合計2基の高出力電気モーターをシャシーの前後に搭載しています。

このように、電動パワートレインはすべてフロア内部に格納される設計とした結果、3列シートのレイアウトでも、広々とした室内空間が確保されています。もちろん、最新のコネクティッドカー・システムも搭載しています。


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スイスの有名な山岳リゾートである「ENGELBERG」にちなんだ車名を持つオールラウンド・クロスオーバーSUV。フォグランプを配備したルーフボックスには自動開閉の機能が搭載されていて、前後バンパーのアンダーガードを装備するなど、オフローダーらしいタフさを演出しています。光によっては青味を帯びるシルバーのボディカラーも特徴的です。
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スイスの有名な山岳リゾートである「ENGELBERG」にちなんだ車名を持つオールラウンド・クロスオーバーSUV。フォグランプを配備したルーフボックスには自動開閉の機能が搭載されていて、前後バンパーのアンダーガードを装備するなど、オフローダーらしいタフさを演出しています。光によっては青味を帯びるシルバーのボディカラーも特徴的です。

もう一つ、「電動DRIVE HOUSE(DDH)」のデモも行なわれました。これは、電動車、V2H充放電機器、太陽光パネル、家庭用蓄電池などで構成する家庭での使用を想定したシステムをパッケージ化して見せたものです。現実的には、三菱自動車の販売店で電動車の購入とあわせ、V2H機器を中心とした家庭用システムを提供するものです。日本でも、2019年内にサービス開始を予定です。

この発表の直後、三菱電機は約12億円を投資して、チェコに電動車両用モーター・インバーターの新工場建設をすると発表しています。EV、HEV、PHVといった電動車向けの需要が欧州で増すと考えて、48Vハイブリッド用スタータージェネレータといったモーター・インバーターの生産体制を2020年をめどに拡充する方針です。


日産独自の脳波測定による運転支援技術?

電動車においては、三菱と両翼を成す日産からは、黒をテーマに一新したコンセプト「ニッサン IMx KURO」が発表されました。これは、2017年の東京モーターショーでワールドプレミアされた「ニッサン IMx」をベースにしたもので、車名の通り、トリムとホイールに黒、ボディカラーにダークグレーを採用しています。実際に目にした印象は、グリルのデザインがソリッドになった相乗効果もあって、エッジの効いたスタイリングが強調されています。

「『ニッサン IMx』の細部やアクセント、ボディカラーなどに変更を加えることで、SUVらしさを引き出せないかと考えました」と、デザイン部門を率いるアルフォンソ・アルバイサ氏は言います。

Vモーショングリルや、フードからボディ後方へ繋がるキャラクターライン、グリルからボディサイドへ繋がる面の上に被せるようにデザインされたフロントフェンダーなど、オリジナルの「ニッサンIMx」の特徴は保ちつつ、より力強く、存在感を強調したデザインとなっています。

技術的にも特筆すべきものがあります。自動運転、電動化、コネクテッドカーといった「ニッサン インテリジェント モビリティ」と呼ばれる次世代技術が満艦飾です。なかでも、独自開発された脳波測定による運転支援技術「Brain to Vehicle(B2V)」が目を引きます。仕組みは複雑ですが、効果を簡単に言えば、「ニッサンIMx KURO」に搭載されたB2V技術がドライバーの反応時間を早めて、思い通りにより楽しく運転をできるようにしてくれたり、自動運転の違和感を解消したりしてくれるというメリットが生まれます。

日産では、ドライバーの操作が遅れるときに発生する運動準備電位のリアルタイム検出、自動運転によるクルマの動きがドライバーの思い描いた運転と異なるなど違和感を抱いた際のエラー関連電位の測定に成功しており、そうした状況下での脳波を測定・解析し、手動での運転時はもちろん、自動運転の状態でも、ドライバーが思い描く通りの運転を実現し、ドライビングプレジャーを高めるという技術です。

<写真3>
車内に設置されたカメラによって、ドライバーの動きや視線を検知します。その結果、ドライバーの意図を汲んで、ディスプレイ上のコンテンツ表示を操るという未来的な機能を搭載しています。
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車内に設置されたカメラによって、ドライバーの動きや視線を検知します。その結果、ドライバーの意図を汲んで、ディスプレイ上のコンテンツ表示を操るという未来的な機能を搭載しています。

「『ニッサン IMx KURO』はゼロ・エミッションのクロスオーバーコンセプトカーあり、人とクルマのコミュニケーション、社会とクルマとの関わり方を変える『ニッサン インテリジェント モビリティ』の将来を体現しています」と、チーフ・パフォーマンス・オフィサーであるホセ ムニョス氏は言います。

自動運転では、「プロパイロット」を進化させた完全自動運転を実現しており、「プロパイロットドライブモード(PDモード)」を選択すると、ステアリング・ホイールが格納されて、シートは大きくリクライニングし、リラックスした姿勢で移動ができます。手動で運転したい時は、「マニュアルドライブモード(MDモード)」を選ぶこともできます。ステアリング・ホイールが現れて、シートはドライビングに適したポジションに戻ります。

電動化では、電気モーターを前後の車軸付近に配置しています。総合での出力は「GT-R」を超える320kW/700Nmに達するというから驚きです。1回の充電で走れる距離は600km以上を確保。当然ながら、EV専用に設計されたプラットフォームを備えており、重量物であるリチウムイオン電池をフロア下に抱え込むように配置しています。その結果、低いフロアで乗り降りしやすく、かつ広々とした居住空間を確保しています。低重心の設計ゆえに、背高ボディのクロスオーバーモデルであっても、スポーティな走行性能を確保しているそうです。

最後に加えておくと、伝統的な日本家屋の開放感を重視して設計されたという内装のデザインも特徴的。頭上のパノラミック・ディスプレイには車外の映像が映し出され、インストルメントパネルやドアトリムは木目調で、障子のように「外」の気配を感じることができるディスプレイを組み込んでいます。浮いたようなスタイリングのシートに描かれた和風の“片流れ”の模様は、最新のレーザーカッターで刻まれています。フレームとシリコンの組み合わせで作られたヘッドレストは3Dプリンターで成形されており、まるで組み木のような模様を持っています。


今回は日本メーカーのジュネーブでの発表をご紹介しました。EVだけではなくプラグインハイブリッドや家庭での電力供給システム、脳波を利用した運転支援技術など、各メーカーそれぞれに新たな進化を見せてくれました。後編では、海外メーカーの動向などもリポートします。


文/川端由美


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