IoTデバイスの発展の鍵になる“低温・低加重”の次世代半導体実装技術

パソコンやスマートフォン、車やロボットなど私たちの身の回りは様々な電子機器で満ちています。その電子機器の頭脳と呼べるものが半導体です。半導体を使った素子は世界中がしのぎを削って研究・開発を行なっており、世界半導体市場統計(World Semiconductor Trade Statistics)によれば市場規模は2018年現在で4,000億ドルを超え、なおも成長し続けています。その中でも大きな存在感を示すのがIoTデバイスです。

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IoTデバイスの急速な発展と半導体技術の進化

総務省より公開された平成30年度版「情報通信白書」によれば、半導体を利用したもので近年急速に市場規模が拡大しているものに、センシングや通信の機能を組みこんだIoTデバイスがあります。例えば、IoTデバイスを道路や橋などのインフラに設置すると、破断などの異変の前にそれを予知して事故を防ぐことができるでしょう。また、人にフィットするデバイスに活用すれば、医療や介護の現場にてヘルスケアデータを常にモニタリングし、異変が起こった時に素早い処置を行い、命を救えるかもしれません。

このように、あらゆる場所にセンサーが設置しネットワークでつなげれば,私たちの生活や社会は大きく変わると言われています。

このような社会の実現を目指すべく、大規模集積回路(LSI)の低電力化を目指す研究を行なっているチームがあります。

LSIの中でもトランジスタは特に重要な部品です。従来はこのトランジスタのサイズをどんどん小さくし,小さい電圧で少数の電子をほんのわずかな距離動かすことで電気の流れのon-offを区別し、省電力を目指してきました。しかし、現在主流となっているMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)と呼ばれる構造を用いたLSIでも、動作電圧が1ボルト程度も必要です。そこで金沢工業大学の井田研究室では、「SOI(Silicon on Insulator)」と呼ばれる、トランジスタ直下に電気を通さない酸化膜を設置する構造を改良し、0.1ボルト程度の低電圧でLSIを動作させる技術を開発しました。上記のような超低消費電力化の技術を使えば、エネルギーハーベスティングのような周囲の環境から微小なエネルギーを生み出し活用する技術と組み合わせることで、あらゆる場所にIoTデバイスを設置できるようになるでしょう。

IoTデバイスの製造プロセスの難所:半導体の実装

これらのIoTデバイスは、従来のセンシングデバイスと同様、電子機器の延長線上にありますが、通常の電子機器よりも厳しい技術的要件を満たす必要があります。例えば、水の配管の曲面部分や人の動きに柔軟にフィットさせて温度センシングをしたい場合は、基板に柔らかい素材を使う必要があります。また、社会の中の様々な場所に大量に設置するためには、価格を安くすることが強く求められます。

つまり、IoTデバイス製造する上で、重要でありかつネックとなるプロセスが「実装」です。IoTデバイスの実装と聞いてイメージしやすいのは、電子工作などでもお馴染みの「はんだ付け」でしょう。はんだ付けは低融点の金属を熱で溶かし、端子と配線をつなぐことで部品の固定を行うとともに通電させます。全ての電子機器にとってなくてはならないプロセスです。

<写真1>はんだ付けイメージ
<写真1>はんだ付けイメージ

下記<図1><表1>で示したように、こうした実装プロセスは通常、基板や部品に最低でも200℃以上の高温を300秒以上、かつ高圧で押し付けなければなりません(リフロー炉の場合)。この高温高圧条件では多くの基板となりうるプラスチックフィルムは変形し、紙は焦げてしまいます。また、耐熱性の低い安価な部品は壊れてしまうため使うことができません。また、物理的な圧力に耐えられない脆い部品は使うことはできません。

<表1>IoTデバイスにおける実装起因の課題

基板 安価であることや、柔軟性があることなど求められる。

それらを実現する素材としては、PETなどのプラスチックや紙なども検討されている。しかし、実装プロセスの高温に耐えられないため使用に制限が出てしまう。

素子 IoTデバイスは様々な部品が組み合わされて使われている。たとえば、マイコンチップや各種のセンサー素子、無線通信に使用する素子など。

IoTデバイスメーカーはこれらの部品を様々な製品の中から選択して使用する。しかし、実際のデバイス使用環境での耐熱性能に関係なく、他の部品の実装に必要な温度に耐える必要がある(リフロー炉など空間全体を加熱するので当然デバイス全体が高温になる)。そうなると、高価な部品を選ばざる得なくなり、トータルコストも大幅に上がってしまう。

また、高密度に集積した部品は脆くなるため、実装時に高圧をかけることが難しく、これも性能向上や小型化、低コスト化にとってハードルになる。

上記にて温度について言及しましたが、汎用的に使えることや接着の強さ、電気特性の信頼性など、実装技術としてクリアしないとならない課題は他にも多くあります。一部、導電性接着剤などを用いた低温実装技術の開発が進められているものの、接着の強さや電気特性の信頼性が低く、実用化には課題も多くあります。一方で、ビジネスサイドからは「安価であること」や「ウェアラブル」など厳しい要求がIoTデバイスには求められます。厳しい状況を逆手に取り、これら全ての課題を超えることができれば、様々な製品開発が加速し、IoTデバイスから得られたデータを活用するビジネスチャンスが見込めるでしょう。

半導体の実装における先進事例紹介

これらの課題に対しての先進的な取り組みをしている コネクテックジャパン株式会社を紹介します。
実装に関しての多くの技術知見を持つ同社に対して、IoTデバイスメーカーの信頼は厚く、世界中から相談や開発依頼が来るといいます。数年後の未来を見据えたデバイスの開発案件など100社程度受けているほどです。

低温・低圧での接合を実現し、フィルムやガラスにも使用可能に

コネクテックジャパンは、<図2>に示すようにはんだ付けの際に基板側にバンプを作製した後、チップと基板間の接合に接着剤を用いるなど様々な工夫を凝らしています。これにより、従来と比べ、はるかに低温・低圧での接合を実現しました<図3>。現在では実装温度を80℃まで下げ、従来比の約20分の1での低荷重接合にも成功しています<図4>。これにより、IoTデバイスの作製時にフィルム、ガラスなどあらゆる基板や低耐熱・低強度の素子も使用できるようになりました。

<図2>接合のメカニズム(コネクテックジャパン株式会社提供)
<図2>接合のメカニズム(コネクテックジャパン株式会社提供)

<図3>ダメージフリー実装(コネクテックジャパン株式会社提供)
<図3>ダメージフリー実装(コネクテックジャパン株式会社提供)

<図4>低温での実装が可能(コネクテックジャパン株式会社提供)
<図4>低温での実装が可能(コネクテックジャパン株式会社提供)

また、実装時の低温化・低加重化を成し遂げるとともに実装工程数を34から3と、大幅に減らし、5,700分の1のサイズで、かつ設備金額も40分の1となるデスクトップサイズのワンストップ型実装装置の開発にも成功しました。

まとめ

IoTデバイスの普及やそれを使用したビジネスを活用するにはデバイス製造工程の実装技術にブレイクスルーが求められています。
今回紹介したコネクテックジャパンのように、革新的な技術を使って、今後はるかに簡易的に試作機製作や実装ラインの確立が期待されています。

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