溶接品に生じる「欠陥」の原因と対策~解決!金属加工における欠陥④

溶接は製品や建造物の組み上げの際に非常に重要になる工程ですが、一方で完全な自動化が難しく器具の使用や設定、作業者の技量にその完成度が左右されてしまう工程でもあります。欠陥の発生は、溶接品を組み込んだ製品の安全性にも大きな影響を及ぼす可能性があるため、溶接に取り掛かる前に発生しうる欠陥とその原因を把握し、欠陥発生時には発生原因に応じた溶接方法の見直しなど、すみやかな対策を講じましょう。

欠陥は製品における品質不良の原因となり、歩留まり低下による製造原価の上昇、上市後のリコール発生につながる恐れがあるため、製造現場品では迅速な原因究明、対策が必要となります。本シリーズでは、鋳造や鍛造、溶接など様々な方法で金属材料を加工する際に、必ず押さえておきたい「欠陥」の種類と、その原因と対策について紹介しています。

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溶接時に発生する欠陥の全体像を確認しよう

<図1>溶接時に発生する欠陥の種類
<図1>溶接時に発生する欠陥の種類

溶接時の欠陥は大きく表面欠陥と内部欠陥に分けられ、表面欠陥は目視での確認が可能です。金属の溶融・凝固現象を巧みに利用し異なる部材を接合する溶接では、接合する部材の相性をふまえた材料選定や、部材の品質ばらつきを抑えた調達・管理が必要です。加えて、加工時における外部環境(温湿度など)の変化が溶融・凝固現象のプロセス再現性を妨げるため、溶接作業時の熟練者のノウハウによって都度加工条件がチューニングされて品質が保たれてきました。

しかし、こうした人依存の作業が残るため、作業員の技量や器具の調整の不備により溶接金属の形状が不安定になる場合があります。また、外部環境や溶接に使用した金属、母材の鋼材の選定により割れが発生することも考えられるため、設計から調達・部材管理、溶接加工時までの全てのプロセスで注意を払う必要があるのです。<図1>

形状の特徴から、溶接欠陥の種類を特定しよう

欠陥にはそれぞれ形状に特徴があります。
まずは、これらの特徴を押さえることで、欠陥の種類を見分けましょう。<表1>

<表1>溶接時の欠陥の種類と特徴

形状 名称 特徴
形状不良 オーバーラップ 溶接金属が母材に重なる。

溶接の欠陥オーバーラップの形状

アンダカット 溶接箇所に埋まり切らない部分が発生し、溝ができる。

溶込み不良 溶着していない部分が残留する

溶接金属割れ 高温割れ 凝固中に発生する割れ。ビードに平行な「縦割れ」、ビードに直角な「横割れ」、終端に発生する「クレータ割れ」がある。

溶接の欠陥高温割れの形状

熱影響部(HAZ)割れ SR割れ 溶接後熱処理などの際にHAZの祖粒域に発生する粒界割れ。
低温割れ 溶接部の冷却後に発生する割れ。発生箇所により、「ルート割れ(溶接金属中に発生するものも存在)」「ビード下割れ」「トウ割れ」と呼ばれる。

溶接の欠陥低温割れの形状

ラメラテア 溶接による、母材鋼板の圧延方向の割れ。

溶接の欠陥ラメラテアの形状

残留介在物 スラグ巻込み 溶接金属中にスラグ(溶接作業中に発生する非金属物質)が残留する。

表面に発生する欠陥は目視での確認が可能ですが、内部に発生した溶込み不良や割れ、介在物の存在を検知するためには超音波探傷機などを使用することが有効です。微細な欠陥でも完成品の強度に関わる重大な問題に発展する可能性が考えらえるため、より正確な欠陥探知を専門家に相談することも検討しましょう。

溶接欠陥の原因を把握し、対応策を検討しよう

どのような欠陥が発生する可能性があるか、あるいは発生しているかを把握したら、その原因と対策を確認しましょう。溶接方法や器具の準備、清掃など、作業員の作業方法の見直しによる改善が見込まれるものと、使用鋼材の性質や化学反応によるため母材や溶接金属の見直しが必要になるものがあります。
以下に、それぞれの欠陥の代表的な原因と対策を紹介します。

オーバーラップ、アンダカット、溶込み不良

不適切な溶接条件によって発生します。オーバーラップは溶接速度が低く溶着金属量が過剰になることで発生し、アンダカットは、逆に溶接電流や溶接速度の過剰が原因と考えられます。溶込み不良は熱が溶接金属に十分に伝わらず、溶け込みが不十分だった際に発生します。それぞれ溶接条件を見直すことで対策します。

高温割れ

溶接金属中に含まれるリンや硫黄などの成分偏析が凝固温度幅の拡大、収縮応力の発生などが原因と考えられます。溶接金属中のリンや硫黄の含有量の低減や溶接速度を低速にして対応します。また、適切な仮付けやタブ板の工夫で収縮応力の影響を低減する取り組みも検討しましょう。

SR割れ

クロムやモリブデン、バナジウムなどの合金元素を含む鋼材のHAZは450℃以上に加熱されると著しく脆化するため、再加熱処理を行った際に発生する応力により粗粒域に粒界割れが発生します。防止のためには、熱処理温度の低下にる、保持時間を短縮、止端のグラインダ仕上げによる応力・ひずみの集中を緩和が有効です。

低温割れ

溶接部の拘束応力やひずみの集中箇所に、溶接の際に侵入した水素が拡散し、HAZの硬化組織が水素脆化を引き起こすことで割れを発生させます。防止のためには溶接中の水素侵入の低減、予熱を活用した冷却速度の調整、また溶接金属の強度が強くなりすぎないよう調整することが考えられます。

ラメラテア

母材の鋼材に含まれる層状の介在物が、溶接による板厚方向の引張引力により引き裂かれることで生じます。ラメラテアの防止には対ラメラテア鋼の使用が有効です。

スラグ巻込み

溶接の前層や前パスのスラグの除去が不完全だった場合や、融合不良(溶融境界の一部に未溶融部分が残存する現象)が発生している場合に生じます。入念なスラグ除去、融合不良の防止が必要です。



以上のように、欠陥の発生原因に応じ適切な対応策の検討が必要ですが、原因の特定が難しい、また、技術や設備などにより、自社内での対応が難しい場合は豊富な経験と知識を備えた専門の加工事業者に相談してみましょう。

まとめ

ここでは、溶接で発生する主な欠陥について紹介しました。欠陥は製品の見た目や製造原価に関わるだけでなく、安全性にも大きく関係します。溶接は金属加工の中でも特に注意が必要な加工方法であり、欠陥については日ごろから作業員や設計担当者への意識付けが重要です。

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