熱処理で生じる「欠陥」の原因と対策~解決!金属加工における欠陥③

金属を加熱・冷却し、組織を変質させる熱処理では主に表面欠陥や割れといった欠陥が発生します。熱処理後の鍛造や圧延の加工の際にも熱が加えられることから、熱処理段階での欠陥は後工程にも大きな影響を及ぼすと言えます。熱処理に取り掛かる前に発生しうる欠陥とその原因をあらかじめ把握し、熱処理後に欠陥が発生した際は、発生原因に応じてすみやかに加熱環境や加熱方法を見直すことが大切です。

欠陥は製品における品質不良の原因となり、歩留まり低下による製造原価の上昇、上市後のリコール発生につながる恐れがあるため、製造現場品では迅速な原因究明、対策が必要となります。本シリーズでは、鋳造や鍛造、溶接など様々な方法で金属材料を加工する際に、必ず押さえておきたい「欠陥」の種類と、その原因と対策について紹介しています。

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熱処理時に発生する欠陥の全体像を確認しよう

<図1>熱処理に発生する欠陥の種類
<図1>熱処理に発生する欠陥の種類

熱処理のプロセスには加熱炉の雰囲気調整や加熱・冷却といった工程があります。それぞれの設計の不備により表面異常や割れ、完成品の形状不良が発生する場合があるので、熱処理で発生する欠陥の形状と主な原因についての全体像を抑えましょう。<図1>

形状の特徴から、熱処理欠陥の種類を特定しよう

欠陥にはそれぞれ形状に特徴があります。
まずは、これらの特徴を押さえることで、欠陥の種類を見分けましょう。<表1>

<表1>熱処理の欠陥の種類と特徴

形状 名称 特徴
表面異常 酸化 酸化スケールができ、他の欠陥を誘発する
脱炭 鋼材表面の炭素が失われ硬化不足を招く。

割れ 焼割れ 急冷中に生じる熱的ひずみによる割れ。
常温まで冷却されてから発生、場合によっては翌日発生する。
研磨割れ 熱処理後、研削時に生じる割れ。
研磨方向に直角に、あるいは亀甲状に発生する。
形状不良 焼狂い・焼曲り 温度の不均一が生じ変形が起こる。
焼むら 焼不足により表面に軟点が生じる。

加工後は上記のような欠陥が発生していないかの検査が必要ですが、微細な割れ(き裂)や硬度、変形の有無の正確な把握には、専用の検査機材や高度な知識が必要になります。正確に欠陥を検出するために、専門家への相談も検討しましょう。

熱処理欠陥の原因を把握し、対応策を検討しよう

どのような欠陥が発生する可能性があるか、あるいは発生しているかを把握したら、その原因と対策を確認しましょう。加熱炉の雰囲気、加熱方法、製品の形状(厚みのばらつきなど)などが主な原因と考えられますが、特定が難しい欠陥も存在するので注意が必要です。
以下に、それぞれの欠陥の代表的な原因と対策を紹介します。

酸化

特に900℃以上の温度で、酸化雰囲気の中加熱すると発生しやすくなります。酸化は肌荒れ(熱処理によって生じた、スケールや脱炭などによる表面の凸凹)や焼むら、焼割れの原因となります。不活性ガスを充満させたり、真空炉を使用するなどしてで、炉内の雰囲気を調整し対策をします。

脱炭

弱還元性雰囲気のなかで、空気中の酸素と鋼材表面の炭素が結合し炭素が失われてしまうことで発生します。炉内のCO2、CO濃度を分析・制御して回避します。

焼割れ

製品の形状や表面、冷却方法の不備や、焼入れ直後の焼もどしの方法、焼入れ温度など様々な原因が考えられます。これらの原因を究明し、原因に応じた対策製品の形状の見直しや加熱温度の再検討など)を講じるが必要があります。

研磨割れ

研磨の熱により表面が650~850℃に加熱されると発生すると考えられています。適切な焼戻しを行うか、強く研磨をかけすぎないよう注意しましょう。

焼狂い・焼曲り

加熱・冷却の不均一、急熱、急冷あるいは部分肉厚の不同や、複雑な形状の際の部品内部の温度の不均一などが原因で発生します。均一な加熱、冷却処理ができるように形状や加熱方法の見直しを行いましょう。

焼むら

脱炭、焼入温度の不均等、冷却の不均一、スケールの存在などによって生じます。原因となる酸化・脱炭の防止策を講じ、均一な加熱のための形状や加熱方法の見直しが必要です。


以上のように、欠陥の発生原因に応じた適切な対応策が必要ですが、原因が容易に把握できない場合や、自社内では改善策の検討が困難な場合は豊富な経験と知識を備えた専門の加工事業者に相談しましょう。

まとめ

ここでは、熱処理で発生する主な欠陥について紹介しました。欠陥は製品の見た目や製造原価に関わるだけでなく、安全性にも大きく関係します。熱処理は製品の強さや硬さ、耐衝撃性や対摩耗性、被削性などに関わる重要な工程です。より品質の高い製品を得るためにも、加熱炉内の環境や焼入れ方法など注意すべき点を抑えておくことが大切です。

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