鍛造品・圧延材に生じる「欠陥」の原因と対策~解決!金属加工における欠陥②

鍛造品・圧延材は、鋳造とは異なり固体⇔液体の相転移(相変態)を伴わないため、冷却時の体積収縮やガス巻込みによる巣(孔)や湯流れ不良による形状不完全の欠陥が発生しにくい特徴があります。一方で、偏析や介在物を含む鋼塊を使用した場合や加工処理が不適切だった場合には、多岐にわたる欠陥が発生しうるのです。そのため鍛造品・圧延材の欠陥とその原因をあらかじめ把握し、欠陥発生時には鋼材の見直しや鍛造、圧延加工の方法の再検討など、すみやかに対策を講じることが大切です。

欠陥は製品における品質不良の原因となり、歩留まり低下による製造原価の上昇、上市後のリコール発生につながる恐れがあるため、製造現場品では迅速な原因究明、対策が必要となります。本シリーズでは、鋳造や鍛造、溶接など様々な方法で金属材料を加工する際に、必ず押さえておきたい「欠陥」の種類と、その原因と対策について紹介しています。

▽解決!金属加工における欠陥シリーズ一覧  

鍛造品・圧延材に発生する欠陥の全体像を確認しよう

<図1>鍛造品・圧延材に発生する欠陥の種類
<図1>鍛造品・圧延材に発生する欠陥の種類

鍛造品、鋼材や非鉄金属、合金などの圧延材には割れやきずなど、主に加工品の表面に欠陥が現れます。
鍛造品、圧延材を得るためには、使用する材料(鋼塊)の選定、鋼塊の準備・手配に加え、加工プロセスである切断、熱処理(熱間鍛造の場合)、鍛造・圧延など、といった工程が必要です。多くの欠陥の要因が、材料(鋼塊)に起因するものであるため、加工プロセスである鍛造・圧延の条件設定だけでなく、使用する鋼塊の選定にも気を配る必要があります。<図1>

形状の特徴から、鍛造品・圧延材欠陥の種類を特定しよう

欠陥にはそれぞれ形状に特徴があります。
まずは、これらの特徴を押さえることで、欠陥の種類を見分けましょう。<表1><表2>

<表1>鍛造品の欠陥の種類と特徴

【鍛造品】

形状 名称 特徴
偏析 ゴースト 大型鍛鋼品の切断面にみられる、圧延、鍛伸方向に
沿って変形したリンや硫黄などの偏析。割れやき裂は伴わない。
割れ 置割れ 鍛造後または熱処理後長時間経過してから生じる割れ。

気温の激変時に発生しやすく、大きな音を発することがある。

もみ割れ 鍛造の伸ばし作業や圧延の際に、変形量が大きくなりすぎることで鋼材の中心部に生じる割れ。高合金鋼に多く見られる。

白点 ニッケル、クロム、モリブデンなどを含む自硬性の高い鋼材の熱間鍛造後冷却時に内部に発生する割れ。割れの形状により「毛割れ」や「銀点」と呼ばれる。
きず 砂きず 脱酸生成物、溶鋼に混入した微細なスラグや耐火物が圧延、鍛造により変形したもの。

 

<表2>圧延材の欠陥の種類と特徴

【圧延材】

形状 名称 特徴
偏析 サルファバンド 鋼中の硫化物が圧延により層状に偏析したもの。

現在は製鋼技術が発達し、サルファバンドを生じさせる鋼板はほとんどない。

割れ ラミネーション 鋼中の酸化物系介在物が圧延によって引き延ばされ発生する層状の割れ。

きず へげきず、

縦/横割れ等

表面が薄くはがれる「へげきず」、圧延方向に割れが起きる「縦割れ」、曲がって割れる「横割れ」、きっ甲状態に割れる「きっ甲割れ」などがある。
スケールきず 加熱処理の際に発生したスケールが加工品表面に圧着。
ロールきず 圧延時に使用するロールの表面の欠損により加工品の表面に周期的にきずが現れる。
形状不完全 折り込み 前段ロールでできた耳を、後段のロールでの圧延時に畳み込み発生する。

 

加工品の表面に現れる欠陥は肉眼でも把握可能ですが、内部に発生した欠陥は超音波探傷などが効果的です。正確な欠陥の検知には専用の装置や技術が必要になるケースもあります。より正確でスピーディな欠陥検知には、専門知識と技術を兼ね備えた専門家に依頼することも検討しましょう。

鍛造品・圧延材欠陥の原因を把握し、対応策を検討しよう

どのような欠陥が発生する可能性があるか、あるいは発生しているかを把握したら、その原因と対策を確認しましょう。原因が鋼塊にあるか、あるいは鍛造・圧延の加工方法にあるかを判断し調達、設計、加工のいずれのタイミングでの対応が効果的かを見極めます。
以下に、それぞれの欠陥の代表的な原因と対策を紹介します。

【鍛造品】

ゴースト

鋼塊中のリンや硫黄などの偏析が原因となるため、より偏析の少ない鋼塊を使用することで回避できます。

置割れ

過大な残留応力が原因となり引き起こされます。これを防ぐためには一度鋼材を冷却したあと、焼戻しという再加熱、急冷の作業を行うことが効果的です。用途や使用材料により低温焼戻しと高温焼戻しを選択します。

もみ割れ

延ばし作業や圧延作業における塑性変形の度合いが鋼材の許容範囲を超え、割れを引き起こす現象です。製品の形状や加熱条件の見直しや使用材料の変更などが対策として考えられます。

白点

鋼中の水素、残留応力(変態応力、熱応力)や偏析、介在物が複合し発生の原因となります。防止には造塊前に溶鋼の脱ガス処理を行うとよいでしょう。また白点は鋼種により異なりますが主に200℃以下で発生するため、鍛造後、徐冷や再加熱処理により脱水素、応力低減、軟化を図ることが推奨されます。

砂きず

密集度が低い場合では、強度面への影響は大きくありません。鋼塊に介在物が存在していることが原因となるため、鋼塊の鋳造段階で介在物を含まないよう製造すること、介在物の少ない鋼塊を選択することが必要です。
ほかにも圧延鋼材同様、へげきず、スケールきずなどの表面欠陥が生じます。これらの場合は加熱、鍛造方法の見直しが必要です。(下記【圧延材】の「へげきず、縦/横割れ等」「スケールきず」参照)

【圧延材】

サルファバンド

硫化物の偏在が多い鋼塊を圧延に使用することで発生する現象です。溶接部近くに存在するとサルファクラック(低融点の硫化鉄共晶が原因となって発生する割れ)などを引き起こすこともありますが、現在は製鋼技術の発展によりほとんど発生しない欠陥となっています。

ラミネーション

鋼板中の酸化系介在物が、鋼中水素の内圧により引き延ばされることにより発生します。多くの場合は熱間圧延時に圧着しますが、介在物が多い場合に割れを引き起こします。より介在物が少ない鋼塊を選定する必要があります。

へげきず、縦/横割れ等

へげきず、縦割れ、横割れ、きっ甲割れなどは鋼塊の介在物に起因するケースが多いため、鋼塊の鋳造方法の改善が有効です。

スケールきず

「スケールきず」は加熱温度が高すぎたり加熱時間が長すぎたりすることで、厚いスケールが発生することで引き起こされます。また、「焼けすぎ」も不適切な加熱時間と加熱温度により鋼塊が過剰に熱されることで粒界酸化が発生する現象です。これらの場合は加熱処理の方法を見直しましょう。

ロールきず

圧延に使用するロールの不備による「ロールきず」は機械の整備を徹底することで防ぐことができます。

折り込み

前段のロールで発生した耳を畳み込んでしまうことで発生します。ロール調整に不備があった場合に上ロールと下ロールの間隙に噛みだしを生じる場合があり、これが折り込みの原因になります。加工前のロールの調整を徹底しましょう。

以上のように、欠陥の発生原因に応じ適切な対応策を検討することが必要ですが、加工方法の根本的な見直しや、加熱の温度や時間など細かい程度の調整には、豊富な経験と知識が必要です。

まとめ

ここでは、鍛造品・鋼材や非鉄金属、合金などの圧延材で発生する主な欠陥について紹介しました。欠陥は製品の見た目や製造原価に関わるだけでなく、安全性にも大きく関係します。使用する鋼材の特性を理解し、成形時にも無理のない設計を心掛ける必要があります。また、熱間鍛造や圧延加工の加熱処理でも欠陥につながる不備が生じる可能性があることも考慮しましょう。

▽解決!金属加工における欠陥シリーズ一覧  

▽おすすめ関連記事