金属材料における応力測定法:光弾性応力測定法、応力塗料法、メッキ法、再結晶法ほか

構造物を設計する上で重要なのがその強度と安全性です。例えば、想定される環境下において使用される金属材料各部に生じるひずみや応力に対して、設計された構造が十分な安全性を担保できる強度を求められているのです。この記事では、それら金属材料における応力測定法について、光弾性応力測定法のほかさまざまな測定法をご紹介、解説いたします。



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光弾性応力測定法

エポキシ樹脂、ガラス、セルロイドのような透明の均質等方体に荷重を加えると一時的に異方性を示し、ここに光を入射させると複屈折現象を表します。これを光弾性効果といい、この現象を利用して物体に生じる応力を求める方法を光弾性応力測定法(photoelastic stress measurement)といいます。

主な手法として、二次元モデルの応力を求める透過光弾性法、三次元モデルの応力を求める凍結スライス法や光散乱光弾性法、構造物の表面に光弾性被膜を接着して応力を測定する光弾性被膜法があります。

二次元モデルの応力を求めるときには、まず単色光を偏光子、1/4波長板の順に通して偏光とし、この光を試料板表面より入射させます。光は主応力方向に振動する2つの光に分かれ主応力面に沿って進行します。2つに分かれた光は、屈折率の異なった面を進むため速度が異なり位相差を生じます。この位相差は主応力差に比例します。

位相の異なる2つの光を1/4波長板、偏光子の順に通して合成すると主応力差の等高線を表す等色線が得られます。また主応力の方向は、2つの1/4波長板を取り除いたときに等色線とともに現れる等傾線によって求められます。

応力塗料法

応力解析に用いる特殊な塗料を応力塗料といい、これは塗料樹脂が硬化後に非常にもろくなる脆性塗料(brittle coating)であり、容易にき裂が生じる性質を利用して応力を測定します。

応力塗料を試験体の表面に塗布し、乾燥・硬化させた後に負荷試験を行うと、ある応力値を超えた試料表面上の塗料膜にき裂が生じます。このき裂の方向は試料表面の主応力線の方向と一致し、き裂間隔と応力値の間にも対応性が見られます。応力塗料は形状・寸法および材質に関わらず実物に適用することができ、作用応力の高い領域や主応力の方向と大きさを容易に知ることができます。

めっき法

銅めっきした試験片に繰返し荷重をかけるとめっき層に組織変化が起こり、めっき層表面に目視で確認できる成長粒子または成長粒子内のすべり帯(微細な黒褐色のはん点)が生じて変色します。この斑点を利用して繰返し荷重による局所的(20μm程度の範囲)な応力(歪)を測定するものが、めっき法または銅めっき法(copper electroplating method)です。

この方法には、ある繰返し数で、斑点を生じる限界歪を利用するものと、繰返された最大せん断歪振幅とめっき層の成長結晶粒径との関係を利用するものとがあります。銅めっき法はめっき層の再結晶温度である80℃以下で用いることが一般的ですが、ニッケルめっき、あるいは鉄めっきを用いると200~250℃近辺まで測定可能となります。機械・構造物の表面において全視野にわたる応力測定が可能であり、稼働状態にある機械部品の応力測定ができます。

再結晶法

多くの金属材料は再結晶現象(recrystallizing)を示します。この現象は再結晶熱処理の温度、時間およびあらかじめ材料に蓄えられている内部エネルギー(転位密度、あるいは塑性歪)に強く依存し、特にある再結晶処理条件下では、得られる再結晶粒径はあらかじめ付加した塑性歪の大きさに依存します。

この再結晶現象を用いて塑性歪を測定する方法が再結晶法です。特に、き裂先端の鈍化に伴い形成される高ひずみ域のひずみ測定およびそれに基づく破壊靱性評価法として用いられています。めっき法が材料表面の計測に限られるのに対し、再結晶法では材料を薄くスライスするなどの方法により内部の状態を評価することができます。

格子法・モアレ法

格子法(grating method)は試料の表面に格子模様など目印となるマークを描き、変形前後のマークの位置変化を測定して、歪および応力を算出するものです。押出し加工時の塑性変形の測定や、ゲージ長の短いことが要求されるき裂先端付近の塑性変形の測定などに用いられます。

モアレ法(moiré method)は、モアレ縞を利用した形状や歪の測定法です。等間隔の平行線からなる試料格子を試料にあらかじめ描き、これに間隔、方向ともに等しい基準格子を重ねます。試料が格子線に垂直な方向に伸びるとそれまで見えなかったモアレ縞が観察できます。このときモアレ縞は定変位線となり、しまの間隔は伸び歪に反比例します。またモアレ法により試料の変形を拡大して観察することが可能です。

モアレ法は金属材料のみならず電子デバイス、複合材料および高分子材料の変形計測に用いられます。また、モアレ法のほか、試料格子の間隔を光の回折が起こる程度にあらかじめ細かくした上で2方向からレーザ光を照射し、変形前後でのそれぞれのレーザ光の回折角度の変化を利用して試料の変形量を測定するモアレ干渉法もあります。

<写真1>一般的なモアレ縞
<写真1>一般的なモアレ縞

ホログラフィー干渉法、スペックル法、コースティックス法

ホログラフィー干渉法(holography interferometry)では、試料へのレーザ光照射によって得られる物体光と参照光を重ねた際に生じる干渉模様を感光材料に記録したもの、すなわちホログラムを利用します。おもな手法に、二重露光法、実時間法、時間平均法があります。

二重露光法は、変形前後の干渉模様を同一の感光材料に記録し変位に相当する干渉縞を得る方法。実時間法は変形前に作成したホログラムからの再生光と変形中の試料からの反射光を干渉させ、変位に相当する干渉縞を観察する方法。時間平均法は試料が変形中のすべての時間露光させる方法です。ホログラフィー干渉法は観察方向の変位は測定しやすく、実機の振動実験に適しています。

スペックル法(speckle method)は、レーザ光を粗面に照射すると、粗面の各点で散乱した光が不規則な位相関係で干渉し合い生じるスペックルパターンを利用する方法です。スペックル法には、スペックル写真法、スペックル相関法およびスペックル干渉法があります。

スペックル写真法は、変形前後のスペックルパターンを二重露光して得られたネガにレーザ光を照射し、生じるヤング縞の方向と間隔からスペックル移動の方向と大きさを求める方法です。スペックル相関法は変形前後のスペックル移動量を直接測定する方法。スペックル干渉法は変形前後のスペックル像の明るさの差を求めて変位成分の等高線を得る方法です。スペックル法はホログラフィー干渉法に比べると光学系の配置が単純であり、テレビカメラで直接像をとらえ、容易にデジタル解析を行うことができます。

コースティックス法(caustics method)とは次の原理で求められるものです。き裂を有する透明な試料に負荷を加えると、き裂先端付近で板厚や屈折率が変化します。平行光を照射すると、き裂先端付近で光路程が変化して光の方向が曲げられます。このためスクリーン上に光の差さない部分ができ、その境界には光が集まって明るい部分となりコースティック像が生じます。この像の形と大きさから応力拡大係数の値K I、K II、K IIIが直接求められます。


<図1>コースティックス法の原理図
<図1>コースティックス法の原理図

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