XRがものづくりの現場の課題を解決。AR、VR、MRの基本と事例をご紹介

XRとは、「クロスリアリティ」あるいは「エックスアール」と呼ばれ、現実空間とバーチャル空間を融合して新しい体験を生み出す画像処理技術である、AR、VR、MRの総称です。XR技術は、人材不足や技術継承に課題を抱える製造業の現場でも広く活用されています。
本記事では、XRの基本と導入事例をご紹介いたします。

XRとは

XRは、AR、VR、MRといった現実空間とバーチャル空間を融合し新たな体験価値を創出する技術の総称です。
XR市場は、VRを活用したゲームやITソリューションへの期待による加熱が沈静化した一方、デバイスの進化やコロナ禍によるリモートソリューションへの需要拡大などを背景に、ビジネス領域への活用に注目が集まっています。経済産業省北海道経済産業局から公開された平成30年のニュースリリースによれば、世界におけるXR関連市場は、2017年に140億米ドルが2022年には2,087億米ドルに成長すると予測されており、日本においても今後製造業や運輸、メディア部門等、XRの活用領域と市場拡大への期待が示されています。(参考文献1)

AR(Augmented Reality、拡張現実)

現実空間にバーチャルの視覚情報を重ねて投影する技術で、メガネ型のスマートグラスを使用するものと、スマートフォンを使ってARを実現するものがあります。
AR技術の活用で代表的な事例として、ナイアンティック社と株式会社ポケモンが共同開発した「ポケモンGO」などコンシューマー向けのゲームアプリが思い出されますが、その一方で、製造業の現場での活用も需要が伸びている技術です。

VR(Virtual Reality、仮想現実)

専用のヘッドセットなどを装着し、仮想空間を体験することができる技術です。こちらも、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「PlayStation VR(R)」などコンシューマーゲームが代表例として挙げられますが、昨今はVRオフィスなどビジネス領域での活用も期待されています。

MR(Mixed Reality、複合現実)

現実世界にバーチャル空間を複合し、CG映像などで作成されたものがあたかもそこに存在するかのような体験を実現する技術です。ARとは異なり、現実世界のものとのインタラクションや、位置関係なども再現します。Microsoftの「HoloLens(R)」が代表的なデバイスで、さまざまなビジネスへの応用が模索されています。

XRのメリット

1.熟練作業員の技術継承

製造業では人材不足により、特に熟練作業員や職人の技術が受け継がれず途絶えてしまうことが問題となります。そこで、熟練作業員の作業手順などを記録し、XR技術で再現することで、時間や場所、人数規模にかかわらずより多くの作業員に技術を伝えていくことができます。

2.トレーニングの効率化

XR技術を活用することで、現実物を使用せずとも実物、本番を想定したトレーニングが可能になります。また、従来紙で作成されていたマニュアルをXR技術でビジュアライズすることで、より直感的に理解できるようになります。これにより、紙のマニュアルで問題になった言語の違いによるハードルなどが解消されることが期待できます。

3.遠隔地からのサポート

昨今のコロナ禍では、出張などの移動が制限され製造現場に直接赴くことができないなどの課題が発生しました。このような場合でも、XRの技術を活用し遠隔にいる作業員の業務を支援することが可能になります。また、これにより出張にかかる経費を削減できるといった効果も期待できます。

XRの導入事例

ここからはXR技術が実際に製造業の現場で活用されている事例をご紹介します。

東芝デジタルソリューションズのAR技術を活用した技能継承

東芝デジタルソリューションズでは、現場業務のデジタル化ソリューション「Meister AR Suite(R)」を提供しています。導入先の応用地質株式会社では、AR技術を活用した電子マニュアルを作成、これまで数十ページにも及ぶ紙のマニュアルと熟練者からのマンツーマン指導により伝えられていた高度な装置の基本的な操作方法なども、電子マニュアルを活用することで熟練者のサポートなしで習得できるようになったといいます。さらに、指導やトレーニングに要していた時間を短縮することにもつながり、より付加価値の高い業務に時間を割くことができるようになりました。(参考文献2)

トヨタのMR技術を活用した整備作業効率化

トヨタでは、スポーツカーの専売店「GR Garage(R)」に、Microsoftが開発、販売するMRデバイス「HoloLens2」を導入し、自動車の整備作業の効率化やトレーニングでの使用を開始しています。従来整備士が自動車の修理や整備作業を行う際に参照する修理書、配線図などは、イラストや文字が中心であったため、実車での正確な位置や、勘やコツなどの情報を伝えることが難しく、さらにCASE*などの複雑化多様化する情報への対応において課題があったといいます。そこで、MR技術を活用し、部品やコネクタの配置などの配線や艤装に関する情報を3Dで実車に重ね合わせたり、自動車の複雑な機能や、目には見えない空力の様子などを、3D ホログラムとして車体に重ね合わせて表示したりすることで、整備士の作業や情報共有を効率化しています。また、作業手順を3Dホログラムで表示することで、トレーニングや作業ガイドとしても活用されているといいます。(参考資料3)

*CASE:自動車で技術革新が進むConnected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の4つの領域


日立製作所のAR技術を活用した作業支援

日立製作所は、YAMAGATA株式会社、京都機械工具株式会社とともにAR技術を使った作業管理システムを導入しています。従来はタブレットPCを用いて作業結果を記録していましたが、指定されたボルトと締結したボルトが一致しているか確認するのに時間を要していました。今回導入された作業管理システムでは、ヘッドマウント型のスマート端末と、無線通信機能をもつデジタルトルクレンチを組み合わせてボルトの締結作業が行われます。このときヘッドマウント型のスマート端末のディスプレイでは次に締め付けるボルトに重ねて締め付け方向やトルク、規定されたトルク値で締結したかを確認するメータが表示されます。また、その他にも熟練者の作業データを記録、活用することでメンテナンスや修繕などの様々な現場での活用が可能だといいます。(参考資料4)


まとめ

コンシューマー向けゲームから注目を集めたXR技術ですが、昨今はますますBtoB、特に製造業の現場で実用化される事例が増えてきています。そこには、人員確保が難しい時代だからこそ、熟練度にかかわらず誰でも高い品質で作業を行えるような仕組みづくりが重要になるという背景があります。技術継承や知識・情報の共有に課題を感じている方は、作業効率化やトレーニングに有効なXR技術の現場での活用を検討してみてはいかがでしょうか。


参考情報
・PlayStation VRは株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標です。
・HoloLensはMicrosoft Corporationの登録商標です。
・Meister AR Suiteは東芝デジタルソリューションズ株式会社の登録商標です。
・GR Garageはトヨタ自動車株式会社の登録商標です。

 

▽参考文献
参考文献1:『xR技術による新ビジネス創出に向けて ~市場創出に向けた全国初の取組をスタート!~』(経済産業省北海道経済産業局)、 2018年7月
参考文献2:『現場における技能継承をAR(拡張現実)で支援 直感的な操作で簡単にARコンテンツを作成できるMeister AR Suite™』(東芝デジタルソリューションズ株式会社ウェブサイト事例紹介)
参考資料3:『トヨタ自動車が全国の GR Garage に HoloLens 2 を導入開始。自動車整備の働き方改革に Mixed Reality テクノロジを活用』(日本マイクロソフト株式会社News Center)、2020年10月
参考資料4:『AR技術を利用した鉄道車両向けボルト締結作業管理システムを実用化』(日立製作所ニュースリリース)、2020年3月

 

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