IoTがものづくりの現場を変える、国内外4つの導入事例をご紹介

IoTとは、「Internet of Things」の略語で、あらゆるものをインターネットに接続し効率化や利便性の向上を目指す技術のことを指し、さまざまな分野で研究開発がなされています。最近では家電や医療分野でのIoT技術の普及など、より人々の生活に近いところでの実用化が話題ですが、ものづくりの現場でも生産設備の稼働の監視や最適化をはじめとした導入事例が生まれており、注目されています。
そこで本記事では、IoTの基本とものづくり現場での導入事例をご紹介します。

IoTとは、あらゆるものをインターネットに接続する技術のこと

IoTは「Internet of Things」、日本語では「モノのインターネット」を意味し、あらゆるものをインターネットに接続する技術です。1999年に生み出されたとされるこの概念は、センサや通信、クラウドコンピューティングなどの技術発展とともに広がり、総務省より公開された令和3年版の情報通信白書では2023年には世界のIoTデバイスは340億台を超えると予想されています。(参考文献1)
さまざまな分野での活用が進んでいますが、上記の白書の中では特に「医療」、「コンシューマー」、「産業分野(工場、物流、インフラ)」、「自動車・宇宙航空」の分野での進展が見込まれると報告されています。

IoTのメリット、デメリット

利便性や生産性の向上に資するIoT技術について、導入する効果・メリットと、反対に問題点・デメリットを整理します。

IoT導入効果・メリット

リアルタイム把握
設備や装置などにセンサを取り付けるかあるいは組み込み、そこからのデータをインターネットを介して取得することで、機器の稼働状況などをリアルタイムにモニタリングすることができます。また、この技術を活用し、機器の故障を予知したり、点検を効率化したりする効果も期待できます。

遠隔制御
インターネットを介して設備や装置と接続することで、遠隔からの操作が可能になります。たとえば、工場などの製造現場に適用することで作業員削減など省力化を実現することができます。

最適化
センサからのデータを蓄積、分析することで事業活動の見直しや、製造現場ではより生産性の高い製造工程の設計に役立てることができます。

IoTの問題点・デメリット

セキュリティ問題
IoTではあらゆるものがインターネットに接続するため、通信をハッキングされることで第三者から妨害を受けるなどの危険性があります。令和4年版の情報通信白書でも、「IoT機器のセキュリティ確保」を目的としたサイバーセキュリティ確保が取組事項として記載されています。(参考文献2)

導入ハードルの高さ
IoTを導入する際には、デジタル人材を確保し、機器(センサ、ゲートウエイなど)や環境(通信、クラウドなど)をそろえる必要があり、これらが障害となるケースがあります。


日本におけるIoTの導入事例

ここからは、製造業におけるIoTの導入事例をご紹介します。

ダイキンの工場IoT

空調機器の世界トップメーカーダイキンは、IoTを活用し工場運営の効率化を目指しています。2017年には日立製作所と協業し熟練技術者の技能伝承を支援するIoTシステム(ろう付け技能訓練支援システム)の開発に着手しています。カメラやセンサを用いて動作や現象をデジタル化し、熟練技術者の作業を手本として訓練者の作業を定量的に評価することが可能となっています。(参考文献3)

三菱電機の「e-F@ctory(R)」

IoTを活用し工場のビッグデータを収集・分析・活用することでものづくり全体の最適化を目指します。設備から取得したデータをエッジコンピューティングを活用し、現場で処理、分析、リアルタイムフィードバックを行うほか、ITシステムとも連携し生産管理や業務改善にもつなげます。また、IoT化実現に向けた「SMKL(R)(Smart Manufacturing Kaizen Level)」という独自のフレームワークで、それぞれの現状にあったソリューションや機器の提案も行っています。(参考文献4)

中小企業でのIoT活用事例

また、中小企業でもIoTの活用による生産現場の効率化が行われています。

岡谷熱処理工業
熱処理炉メーカーと連携し、スマートフォンでリアルタイムに稼働を確認できるIoTシステムを導入。これにより、負荷の高かった夜間の点検業務を軽減することに成功。(参考文献5)

飯山精機
設備の稼働状況を可視化するため、三色灯の光をセンサ読み取るIoTシステムを構築、遠隔からでも設備の稼働状況を把握することが可能になった。また、本システムの外販も開始。(参考文献6)


世界のIoT導入事例

ドイツ・シーメンスのスマートファクトリー

ドイツ政府が2011年に発表した「インダストリー4.0」は、デジタル技術を活用することでものづくりを変革する産官学共同の研究開発プロジェクトです。そのなかでも、生産工程をデジタル化し生産技術を高度化、効率化するスマートファクトリーが構想されました。
このインダストリー4.0のモデル工場のひとつとなったのがシーメンスのアンベルク工場です。ここではバリューチェーンの75%を自動化、作業現場のデジタル化は100%を達成しています。(参考文献7)

IoTソリューションとしては同社の「MindSphere」というIoTオペレーティングシステムを導入、1日に5000万の工程、製品のデータを分析していると言います。エッジコンピューティングとAI技術を組み合わせた予知保全や、デジタルツインの導入も先駆けて行われています。(参考文献8)

中国・ハイアールの産業用IoTプラットフォームとスマートファクトリー

中国では、「中国製造2025」政策のもと、IoT技術を活用したスマートファクトリー化を積極的に推進しています。

中国発の家電のグローバルメーカーハイアールは、工場プロセスとサプライチェーン全体をデジタルで統合しマス・カスタマイゼーション(大量生産の生産性を維持しつつ、顧客のニーズに合った製品を生産、販売すること)を実現する産業用IoTプラットフォーム「COSMOPlat(R)」を展開しています。(参考文献9)

2021年には同じく中国の通信機器大手ファーウェイと共同で、5Gとモバイル・エッジ・コンピューティング、AIを組み合わせた製造ソリューションを開発し、すでに中国国内7か所の工場に導入済みです。現在は高性能なマシンビジョンの実装が実現されていると言いますが、今後はさらにデジタルツインの実装により、予知保全や製造工程変更シミュレーションが実現できるようになる見込みです。(参考文献10)


IoT導入の3つのポイント

実際にものづくりの現場にIoTを導入する際に気を付けるべきポイントをご紹介します。


1. 解決したい課題に沿った設備を導入する
これまで見てきたように、IoTは大変広い概念で、必要となる設備や技術も多岐にわたります。IoT技術の導入を検討するときには、自社の課題と導入の目的を明確にすることが必要です。まずは少数の設備からスモールスタートさせることも有効です。

2.データ分析の目的を明確にする
実際に設備等から取得したデータをどのような目的で活用するのかを明確にすることも重要です。実際の業務改善につながる分析結果を取得できるように設計します。

3.デジタル人材の確保、育成
IoTでは様々な機器や技術が組み合わせられているため、それらの役割を理解し運用することが求められます。IoTの導入と運用にあたっては、デジタル技術に関する知識を持ち、デジタルデバイスの操作に慣れた人材を採用もしくは育成することも検討しましょう。


まとめ

IoTはものづくりの現場を効率化するために非常に有効です。海外ではスマートファクトリーに向けた取り組みのなかでIoTは欠かせない技術となっています。一方、日本ではIoTへの取組の遅れが指摘されています。日本のものづくりの現場では今まさに、海外の先進事例に学びながら、日本の環境にマッチしたIoT導入、デジタルトランスフォーメーションの在り方を模索することが求められているのではないでしょうか。


参考情報
・e-F@ctoryは三菱電機株式会社の登録商標です。
・SMKLは三菱電機株式会社の登録商標です。
・COSMOPlatはチンダオ ハイアール カンパニー リミテッドの登録商標です。

 

▽参考文献
参考文献1:『令和3年版情報通信白書 第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済 2 ICT分野の主要製品・サービスの市場規模 (2)IoTデバイスの急速な普及』(総務省)
参考文献2:『令和4年「情報通信に関する現状報告」(令和4年版情報通信白書)』(総務省)2022年7月
参考文献3:『ダイキンと日立が、IoTを活用し熟練技術者の技能伝承を支援する次世代生産モデルの確立に向けた協創を開始』(ダイキン工業株式会社ニュースリリース)2017年9月
参考文献4:『e-F@ctoryご紹介』(三菱電機株式会社ウェブサイト)
参考文献5:『中小ものづくり企業IoT等活用事例概要資料』(経済産業省 関東経済産業局)2017年3月
参考文献6:『IoTの導入で夜間や早朝の管理負担を大きく軽減。賃金基準を明確にしたことで若手社員の応募数が2倍に増加。』(経済産業省 中小企業庁「ミラサポplus」)
参考文献7:『2019年度特別調査 欧州における生産・製造新技術に関する調査』(一般財団法人 日本船舶技術研究協会ウェブサイト 海外情報報告書(2019年度報告書))、2020年3月
参考文献8:『シーメンスが進めるDX(新しいものづくりプロセスの実現) ~グローバルとの比較も含め~』(シーメンス株式会社ウェブサイト)、2021年9月
参考文献9:『COSMOPlat』(Haier Group Website)
参考文献10:『ファーウェイ、ハイアール、チャイナモバイル、 スマート製造向け5G実装の飛躍的進歩を発表』(Huawei Technologies Co.Ltd.最新ニュース)、2021年11月

 

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