物流ロボット開発ストーリー。物流の現場に注目し、「カゴ台車」専用AMRにたどり着く

INTERVIEW

株式会社オカムラ
物流システム事業本部 
山崎 恵一
田中 晃司

物流の現場で用いられている「カゴ台車」搬送が抱えていた課題

コロナ禍による“おうち時間”の増加に伴い、ネットショッピングの需要が拡大。宅配便取扱個数は増加傾向にあります。国土交通省による「令和2年度 宅配便取扱実績について」によれば、2020年度(2020年4月〜2021年3月)の宅配便取扱個数は前年度比11.9%増の48億3,647万個になるなど、過去最高の数値を更新しています。(参考文献1)

多忙を極める物流の現場において、大量の荷物を効率よく運ぶために欠かせないものが格子状の台車、通称「カゴ台車」です。一般的なカゴ台車は、開口面以外の3つの面が柵で囲まれていて、開口面は高い位置に積んだ荷物の落下を防ぐサイドバーがある構造をしています。大きさの異なる商品や宅配便の荷物を一度に運ぶときなどに利用します。例えば物流倉庫から小売店への配送や、配送センターから配送センターへの輸送時などに使われます。

倉庫の中でカゴ台車に荷物を積み、そのままトラックの荷台に入れて輸送できるため、何度も荷物の積み降ろしをせずに済み、現場作業の効率化・時間短縮につながります。利便性の高さから、広く普及しているカゴ台車ですが、これまで人の手で押して運ぶ必要があったため、かなりの労力がかかります。また、人身事故が発生してしまうケースもあります。

物流ロボットは、AGV(無人搬送車)とAMR(自律走行搬送ロボット)に大きく分類できる

オカムラが開発した自律走行搬送ロボットORV(提供:オカムラ)
オカムラが開発した自律走行搬送ロボットORV(提供:オカムラ)


物流ロボットは、AGV(無人搬送車)とAMR(自律走行搬送ロボット)に大きく分類されます。

AGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)は、一般的に知られている倉庫内の搬送ロボットです。AGVは、入力されたプログラムに合わせて、各ロボットの動きはコンピューターが中央制御します。例えば倉庫内の棚の下などにロボットが潜り込み、棚を持ち上げ、床面に設置されたガイドに従って搬送します。したがって、床面にガイドとなる経路テープやマーキングが必要であり、また、走行軌道の変更に手間がかかる、軌道上の障害物を避けて走行できない、といった課題がありました。

AMR(自律走行搬送ロボット)は、一台一台のロボットが、随時自らの走行ルートを作成し、自律移動します。まず、AMRが倉庫内をテスト走行し、倉庫のマップを作成します。1台のORVがマッピングした地図は、全体で共有可能です。搬送作業をする際には、搭載したLiDAR(光センサー)で周囲の状況を確認しながら走行します。その際、マップとLiDARから得た情報を組み合わせ、AIが走行ルートを自動作成し、各々の判断で走行します。庫内のレイアウトや走行ルートが変更になっても柔軟に対応でき、大規模な投資や工事が必要ありません。


オカムラが開発した物流ロボットORVの特徴は、カゴ車の片側を掴み上げ、自動で牽引すること

オカムラは、AMR型の物流ロボット「ORV (Okamura Robot Vehicle)」を開発しました。ORVは、搭載されているLiDARセンサーをもとに周囲の環境を把握しながら、周辺地図の作成と自己位置推定を行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)の技術を活用した自律走行搬送ロボットです。人工知能(AI)によって倉庫内に置かれているカゴ台車を自動認識して取りに行き、カゴ台車を掴み、目的地まで障害物を避けながら搬送します。

ORVは牽引方式ではなく、片持ち方式を採用しています。カゴ台車の片側を掴み上げることで、その場旋回など小回りが利く動作が可能です。従来の牽引型AGVよりも省スペースで方向転換ができ、狭い通路も走行できます。

カゴ台車の片方を持ち上げて運搬する片持ち方式により、その場旋回が可能で、小回りがきく(提供:オカムラ)
カゴ台車の片方を持ち上げて運搬する片持ち方式により、その場旋回が可能で、小回りがきく(提供:オカムラ)


「エレベーターや垂直搬送機の中などの限られたスペースでも、カゴ台車の整列配置をすることが可能です」(田中氏)

カゴ台車の移動、搬送は、場合によってはかなりの重量物であることに加え、数量、回数が多いことから、多くの物流現場で省力化が課題となっていました。ORVは、SLAM技術とAIを組み合わせることによって、従来の課題を解消したとのことです。


物流ロボット開発ストーリー。物流の現場に注目し、カゴ台車専用AMRにたどり着く

オカムラについて、多くの人はオフィス家具メーカーというイメージを持っていると思いますが、実は昔から物流システムの開発に取り組んできた企業でもあります。自動倉庫や、搬送・仕分け機器などの物流システム機器の開発・製造、導入・運用支援、アフターサービスなど物流システムにおける一貫したソリューションを提供してきました。

オカムラが自律移動ロボットの開発に取り組み始めたのは、2017年ごろ。すでにAGVは市場に導入されており、研究段階のAMRが世の中にリリースされ始めたタイミングでした。AGVは倉庫内作業の自動化を進める優れたシステムでしたが、コスト面や、汎用性などの面で、導入できる倉庫は限定的なものでした。完全自動化した倉庫と、人手作業の間を埋めるものとして、人と協働するロボットが生まれていました。

「そうしたロボットなどを見て、当社もAMRを開発していかなければいけないな、と思ったんです。その前からSLAM技術については勉強していたので、それを使う形でさまざまな試作品を開発していきました」(山崎氏)

いくつかの試作品を開発する中で、「普通の自律走行搬送ロボットを開発しても明確な特徴が出せず、他のメーカーと同じようなモノになってしまっていたんです。弊社独自の強みをどう出すか。そこを考えた末に、現在のORVのコンセプトが見えてきました」と山崎氏は言います。そこで目をつけたのが、カゴ台車専用のAMRの開発でした。倉庫内だけでなく、倉庫から小売店、物流センターから配送センターへと、大きさも重さも異なるいろいろなものを積み上げて運ぶカゴ台車は非常に多く使われているのに、その搬送はほとんど人力に頼っていました。自社工場でのオフィス家具などの製品配送においても、カゴ台車を使うケースが多かったこともヒントになりました。

「物流現場においては、カゴ台車が倒れて下敷きになったり、足をひかれたり、手をはさまれたりといった声を聞いていました。そうした課題を解決する手段としても、自律走行搬送ロボットが良いと思い、具体的に開発を進めていくことになりました」(田中氏)

カゴ台車用のAMRを開発する中で、いかに小回り良く動けるかという課題が出てきました。日本の狭い倉庫の中で、ロボットがカゴ台車を牽引して運ぶのはスペース的に難しいとわかったため、掴んだ部分を持ち上げながら運ぶ片持ち方式を開発していきます。

オカムラが物流システムを展開してきた中で培ったノウハウを生かしながら開発。国際物流総合展2018に「ORV」を初出展。そこからバージョンアップして国際物流総合展2020にも出展。現在の形にたどり着いていきました。

「当初のロボットはカゴ台車とロボットをつなぐのは人間がやっていましたが、カゴ車を自動認識し、自動で片側を掴み上げて牽引するなど、すべて自動で行えるようになりました。ピックアップから搬送、配置までロボットが行えるのはORVの大きな強みとなっています」(山崎氏)

かご車を認識するためのAIによる画像認識といった主要機能は専用のAI用コントローラーによって実現されています。


既存の物流センターでの物流ロボット導入を目的とした実証実験を開始

オカムラの自律走行搬送ロボットORVがカゴ台車を運搬する様子(提供:オカムラ)
オカムラの自律走行搬送ロボットORVがカゴ台車を運搬する様子(提供:オカムラ)


現在、ORVの使い勝手や運用ソフトの改善など、実用化に向けた実証実験を行っているオカムラ。2020年12月から、大手ドラッグストアチェーンの商品を扱う物流企業と共同で実証実験を実施しています。

「共同で実証実験を行っている企業では、庫内作業の自動化と省力化を目指していく中で、AGVの導入にはハードルを感じていたそうです。そこでAGVとは異なり、既存の物流センターの運用や設備を大幅に変更することなく導入効果が期待できることから、ORVに注目していただきました」(田中氏)

この企業以外にも、すでに数社から検討の問い合わせが入っているそうです。

「オカムラは自社で物流システムの製造工場を持っていますし、物流システムを開発するメンバーもいます。現場のニーズは営業のメンバーが吸い上げてきます。これまで積み上げてきたアセットをもとに、時流にあった製品を自社で開発を進めています」(山崎氏)

オカムラでは、新しい取り組みとして、AIを搭載したロボットによる自律ピッキングと、ロボット単独では難しい作業を遠隔操作技術の活用により人が倉庫から離れた場所でロボット操作を行い遠隔でピッキング作業を行う、ハイブリッド型の物流自動化ソリューション「PROGRESS ONE」の事業化を進めています。2022年3月に開催された世界最大規模のロボット専門展「2022国際ロボット展」では、このソリューションの展示・デモンストレーションを行いました。

こちらは、さまざまな対象物に対応できるエンドエフェクター(ロボットハンド)や対象物検出技術、動作計画策定に関わるAIをはじめとする技術開発パートナー、実証実験パートナーとの連携及び検討を進め、2022年度より物流現場での実証実験を行い、2023年度以降のサービス提供開始を目指すとのことです。

文/新國翔大
写真/早坂卓也


▽参考文献
参考文献1:「令和2年度 宅配便取扱実績について」(国土交通省プレスリリース)、 2021年8月

 

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