物流支援ロボットが実現する物流業界の省人化・効率化のゆくえ。自律運転ロボットが搬送作業の負荷を軽減

INTERVIEW

株式会社ZMP
CarriRo事業部
部長 笠置 泰孝

物流支援ロボットは、人手不足が顕著となっている物流業界の省人化・効率化をめざし開発されたロボットです。自動車やロボットの自動運転技術を開発してきた株式会社ZMPは、人の移動だけでなく、物の移動も自動化するために2014年に物流支援ロボットの「CarriRo(R)(キャリロ)」を開発しました。同ロボットはコロナ禍による物流需要の高まりや、省人化の取り組みに対する関心の高まりから、倉庫や工場での導入が増えていると言います。
今回は、株式会社ZMPのCarriRo事業部長笠置泰孝(かさぎ・やすたか)氏に、物流支援ロボットの開発背景や特徴、種類について詳しくお伺いしました。

物流支援ロボットが注目される理由

物流支援ロボットは、ネットショッピングの拡大と共その必要性が注目されてきました。スマートフォンなどの普及により、Amazonや楽天市場などのECサイトを通じてネットショッピングする人は年々増加。また、コロナ禍の外出自粛要請に伴う“巣ごもり消費”も相まって、さらにその割合は増加しています。

総務省が実施している「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について」によれば、2021年7月時点でネットショッピング利用世帯の割合は51.8%となっています。そうしたEC需要の拡大とともに、宅配便取扱個数も増加。2020年度(2020年4月〜2021年3月)の宅配便取扱個数は前年度比11.9%増の48億3,647万個になるなど、過去最高の数値を更新する規模になっています。配送需要は急速に拡大する一方、物流業界では少子高齢化による労働人口の減少や、労働環境による不人気などから人材不足が顕著に。2027年には需要に対して、24万人のドライバーが不足する、とも指摘されています。(参考文献1)

“物流クライシス”が叫ばれる中、物流の省人化・無人化を促進するロボットとして需要を拡大させていっているのが、ZMPが開発する物流支援ロボット「CarriRo」です。ソフトバンクやヤマト運輸、ヤマエ久野など300社以上(2021年12月時点)に導入されています。CarriRoは台車タイプから始まり、フォークリフトや牽引車など商品のラインアップも拡大させていっています。


物流支援ロボットが採用していたライントレース方式とSLAM式が抱えていた課題

株式会社ZMP CarriRo事業部長の笠置泰孝氏
株式会社ZMP CarriRo事業部長の笠置泰孝氏


物流支援ロボットの開発に関してお伺いした株式会社ZMPは、二足歩行ロボットを製作する企業として2001年に創業。これまでにドライバーの安全・快適を実現するために自動車自体が周囲の情報を把握し、ドライバーに的確に表示したり、警告を行ったり、ドライバーに代わって自動車を制御するなどの運転を支援するADAS(先進運転支援システム)の開発を手がけてきました。

そんなZMPが物流支援ロボットを開発し始めたのは今から8年前、2014年のことです。

「会社の近くにあった配送センターでひとりの作業スタッフが台車2台を同時に使って荷物を運んでいたことが開発のきっかけです。弊社が培ってきた自動運転車の技術を活かすころで、作業スタッフの負担を軽減できるのではないか、と思いました」(笠置氏)

しかしながら、当時は今のように物流支援ロボットが当たり前ではない時代。本当に物流支援ロボットのニーズはあるのか、数社にヒアリングを行います。「その結果、物流の現場において確実にニーズがあることがわかった」(笠置氏)と言い、開発に着手します。

以前から自動で走行し、人の代わりに搬送作業を行うロボットは存在していました。それらはAGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)と呼ばれ、1980年代から工場などで活用されていました。

従来のAGVは床に磁気テープを張り巡らし、搭載された磁気センサーでルートを正確に読み取って走行するルートを決める「ライントレース式」が主流でした。近年はロボットが自分の位置を把握しながら走行する「SLAM式」という方法が登場しています。SLAM式は細かく分けると、周囲の物体との距離をレーザー光の跳ね返りから測る「LiDAR SLAM」と、高度な画像認識技術から測る「Visual SLAM」という方法があります。ただし、どちらの方式にも課題があり、一般の物流倉庫への導入は進んでいなかったといいます。

「ライントレース方式は正確に直進や停止ができるものの、動きの柔軟性に欠けてしまいます。また、床に磁気テープを張るのに1〜2か月かかってしまうため、導入のハードルが高く、物の配置が常に変化する倉庫・工場には対応することができません。一方のSLAM式は床になにも貼らずに柔軟にルートを決められるものの、周囲の環境変化で動作が不安定になってしまう、という課題がありました。私たちはそうした課題を解決するロボットを作ろうと思ったのです」(笠置氏)

2015年には前を歩く人に追従する試作機が完成。その後、実証実験を重ねていきます。自動制御、追従速度、停止位置、動き始めの走り出しなど、利用者となる現場の作業スタッフたちの意見も重視しながら試行錯誤を繰り返していき、2016年8月に、前を歩く人について動く「カルガモモード」を搭載した「CarriRo FD」を発売。作業員は台車を押さなくても、歩くだけで複数の台車の荷物を搬送することが可能になりました。
さらに2018年には、自動運転車の技術を活かし、無人での搬送を可能にする、「自律移動モード」を搭載した物流支援ロボット「CarriRo AD」を発売しました。


物流支援ロボットの導入のしやすさを考え、ランドマークを貼るだけでルートを決められる独自の「Visual SLAM」を開発

ZMPが開発した物流支援ロボットは、床に貼られたランドマークをガイドに自律的に移動する
ZMPが開発した物流支援ロボットは、床に貼られたランドマークをガイドに自律的に移動する


ZMPが開発した物流支援ロボットCarriRoの自律移動モデルは、「直進」、「曲がる」、「止まる」といったアクションを表す2次元マーカーが印刷されている縦10cm×横1mのシールのような「ランドマーク」を床に張るだけ。ランドマークの上をCarriRoが走行し、指示を読み取って自律的に移動します。

「ランドマークを読み取れないとCarriRoが止まってしまうため、読み取りの信頼性を向上させることにはこだわりました。例えば、CarriRo自身の陰でランドマークをカメラで読み取れなくなる事態が発生しないよう、LEDライトで常に床を照らすようにしています。ライトの当て方によっては反射して読み取れなくなるため、角度も微調整しています」

「そのほか、ランドマークを読み取った後、まっすぐ次のランドマークへと進む直進性も大切になります。この直進性を実現するため、CarriRoではランドマークへの進入角度が異なっていても正しい進行方向へ修正する技術を取り入れています」(笠置氏)

また、従来のSLAMでは、平面の特徴点を捉えるレーザーセンサーの「2D-LiDAR」を使用していますが、CarriRoではカメラを使い、より多くの特徴点を捉えることができる「Visual SLAM」を採用。物体だけではなく、壁の色の違いといった人の目に近い違いをカメラで捉えることができるようにしています。

自律移動モデルでは最大積載150kg、牽引300kgに対応していますが、重量版自律移動モデルでは最大積載200kgかつ牽引600kgが可能。最大可搬重量は800kgとなっているなど、これまでの2倍以上の可搬重量を実現しています。


ZMPは最大可搬重量600kgとこれまでの2倍以上の重量に対応する重量版自律移動モデルの物流支援ロボットも開発
ZMPは最大可搬重量600kgとこれまでの2倍以上の重量に対応する重量版自律移動モデルの物流支援ロボットも開発


「CarriRoは導入のしやすさ、コストパフォーマンスという観点から評価されており、2021年12月時点で導入企業数が300社を突破しています」(笠置氏)


物流支援ロボットの進化で、あらゆる搬送シーンの無人化を目指す

ZMPでは、CarriRo Forkのリーチタイプといった物流支援ロボットの製品カテゴリ拡大を行っている
ZMPでは、CarriRo Forkのリーチタイプといった物流支援ロボットの製品カテゴリ拡大を行っている


台車タイプから始まったZMPの物流支援ロボットですが、製品カテゴリを拡大しており、フォークリフト「CarriRo Fork」や牽引車(トラクター)「CarriRo Tractor」なども展開しています。

「CarriRo Forkはパレットの差込口を認識するセンサーを搭載し、より確実にパレットを搬送できます。ウォーキータイプは床に置いてあるパレットの自動ピッキングが可能。リーチタイプはリフトする高さも5.9mまで搬送可能で、2~3段と縦積みしたラックへの荷揚げ・荷下ろしも行うことができます」(笠置氏)

CarriRo Forkでは、自己位置を推定する手段として、レーザーと反射板を活用した「レーザー方式」を採用。CarriRo Forkの上部約2.2mの位置にセンサーが搭載されており、その高さに反射板を走行したいエリアに取り付け、反射板の位置が3点以上計測できていれば、自己位置の推定を行って自律移動走行をしていきます。

「また、無人化に伴い安全装備も搭載し、車両後方下には2D-LiDARを搭載し、周囲の障害物の状況を補足しながらの移動が可能です」(笠置氏)

CarriRo Forkに加えて、ZMPがこれまで自動運転開発で培ってきた自動運転技術を活用し、牽引車(トラクター)「CarriRo Tractor」も展開しています。

こうした製品を通じて、ZMPが目指すのは倉庫・工場などで行われるあらゆる搬送シーンの無人化です。例えば、ZMPが製造する台車タイプのCarriRoとフォークリフトCarriRo Forkを連動させたパレット無人搬送の連携機能、クラウドを通じて一元的に管理・制御できるサービス「ROBO-HI」による多数のロボットの交通制御や他搬送機器類との連携機能、物流効率の可視化といった機能を活用できるようにしています。

「これらの機能を活用することで、例えば倉庫内ラックや棚の移動をCarriRo Forkが行い、その荷物を無人搬送ロボCarriRo AD+に積み込むことで、次の工程まで無人で物の移動ができるようになります」(笠置氏)

人手不足が顕著となっている物流業界。搬送作業の負荷を軽減し、省人化・効率化を実現するロボットとして、CarriRoの需要は今後も高まっていきそうです。


文/新國翔大
撮影/嶺竜一


参考情報
・CarriRoは、株式会社ZMPの登録商標です。

▽参考文献
参考文献1:「家計消費状況調査 ネットショッピングの状況について」(総務省統計局)、 2022年8月

 

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