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XRとは、「クロスリアリティ」あるいは「エックスアール」と呼ばれ、現実空間とバーチャル空間を融合して新しい体験を生み出す画像処理技術である、AR、VR、MRの総称です。XR技術は、VRを活用したゲームやITソリューションだけでなく、デバイスの進化やコロナ禍によるリモートソリューションへの需要拡大などを背景に人材不足や技術継承に課題を抱える製造業の現場でも広く活用されています。本記事では、XRの基本と導入事例をご紹介いたします。
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津⽥建二氏の『半導体入門講座』の連載第38回(最終回)は、最終章の後編となる総論として、日本半導体復活に向けた提言を取り上げます。最終回では、これまで本連載を続けてこられた津田氏に、半導体産業を取り巻くベンチャーキャピタル(VC)、大学ベンチャーをはじめとするアカデミア動向紹介に加え、企業のみならず日本という国自体が具体的になにを行なえばよいのか日本半導体復活に向けた提言を行って頂きます。
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テレビやゲーム機など表示デバイスで用いられる有機ELは、素子構造を簡素化し細かくしたり、薄くしたりすることでデバイスの高画質化や薄型化が行われてきた一方で、消費電力低減を目的とした有機EL素子の駆動電圧を低減するニーズがあります。このニーズに対して、従来の1/3程度となる約1Vの起電力での有機ELの低減圧駆動を発表したのは、富山大学の有機ELと分子科学研究所の有機太陽電池の研究グループによる共同研究であることを御存じでしょうか?今回は、同研究成果を発表した富山大学の森本准教授と分子科学研究所の伊澤助教に、共同研究の経緯や有機EL素子の低電圧駆動メカニズム、今後の研究方向性についてお話をお伺いしました。
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IoTとは、「Internet of Things」の略語で、あらゆるものをインターネットに接続し効率化や利便性の向上を目指す技術のことを指し、さまざまな分野で研究開発がなされています。最近では家電や医療分野でのIoT技術の普及など、より人々の生活に近いところでの実用化が話題ですが、ものづくりの現場でも生産設備の稼働の監視や最適化をはじめとした導入事例が生まれており、注目されています。そこで本記事では、IoTの基本とものづくり現場での導入事例をご紹介します。
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今回で第37回となる、津⽥建二氏の『半導体入門講座』。最終章の中編では、日本で復活した半導体メーカー2社の事例を紹介していきます。彼らはなにをおこなうことで復活を遂げたのでしょうか? 中編となる今回は、ルネサスエレクトロニクス株式会社とエルピーダメモリ株式会社の半導体メーカー2社を取り上げ、総合電機からの脱皮と外国人の積極的な採用を進めダイバーシティそのものが企業文化になった両社の事例から日本半導体復活について論じて頂きます。
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アルミニウムの「水素脆化」は、アルミニウム合金内に存在する水素が金属の強度を低下させる現象ですが、そのメカニズムは長い間分かっていませんでした。このアルミニウムの水素脆化や応力腐食割れといった技術的課題が、アルミニウムの活用範囲の制限となっていたのです。この未解決課題に対し、九州大学大学院をはじめとする研究グループはアルミニウムの水素脆化メカニズムの解明を進め、ナノサイズの添加元素を入れることで水素脆化を防止できることを発見しました。今回は、九州大学大学院工学研究院の戸田教授にアルミニウムの水素脆化メカニズムや防止技術についてお話を伺いました。
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有機ELでものづくり日本を取り戻そうとする活動を紹介する本連載。世界トップレベルの印刷有機EL技術を保有する山形大学は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)研究成果展開事業大学新創業創出プログラム(START)プログラム(2021~2023年度:3年間)に採択され、印刷有機ELの社会実装を目指す研究開発を進めています。後編では、前編に引き続き山形大学大学院の城戸卓越研究教授に、JST-STARTプログラムの概要やマイクロLEDと比較したときの有機ELの優位性について紹介して頂くともに、ものづくり日本を取り戻すための提言をお伺いします。
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有機EL(有機エレクトロ・ルミネッセンス(Organic Electro-Luminescence))は、電圧をかけ電気を流すことにより有機物が自ら発光する現象を意味し、その特徴を活かし次世代ディスプレイとして腕時計デバイス、テレビをはじめとした様々な製品に使われています。これら実用化に向けたブレイクスルーとなったのが、山形大学の城戸教授による白色有機ELの発見です。世界の誰も試みていなかった白色有機ELが、どのように開発されていったのかを御存じでしょうか?本連載では、有機ELでものづくり日本を取り戻そうとする活動に注目します。前編となる今回は、山形大学大学院の城戸卓越研究教授に、白色有機EL開発ストーリーについてお伺いしました。
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コンクリート業界の脱炭素化の取り組みを紹介する本連載。建設用3Dプリンターは、建設分野で用いられる3Dデータをもとにロボットが自動で立体形状を造形する3D構造物の製造装置ですが、世界でこの建設用3Dプリンターが注目される理由をご存じでしょうか?注目される理由として、工期短縮、高い造形自由度、廃棄物・二酸化炭素排出削減という3つの特徴が挙げられており、日本も2018年に官民連携組織「3Dプリンティングによるコンクリート構造物構築に関する研究委員会」が発足しました。そうしたなか、日本でいち早く海外から建設用3Dプリンターを導入し、事業着手したのが會澤高圧コンクリートです。後編では、前編に引き続き會澤高圧コンクリートに、モルタルを使った建設用3Dプリンターの特徴や導入事例を紹介して頂くともに、コンクリート業界の脱炭素化に向けた提言をお伺いします。
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有機農業は、化学的に合成された肥料や農薬、遺伝子組換え技術を利用せず、環境への負荷をできる限り低減した農業です。地球環境への優しさに加え、生産者および消費者の人体への悪影響の可能性がなく、豊富な栄養を含んだ作物が育つこともメリットがある一方で、農薬を使わないため、栽培に手間がかかり、労働時間は慣行農業の1.5倍かかるデメリットが存在します。この労働時間の多くを占めるものが、雑草を抜くまたは抑草のための除草作業です。この除草作業を自動化するロボット「アイガモロボ」の開発に取り組むのが、東京農工大学発ベンチャーでスタートアップの有機米デザイン株式会社です。今回は、アイガモロボの開発者でもある同社取締役の中村氏にアイガモロボの開発ストーリーに加え、同ロボット活用による日本の農業存続への期待についてお話を伺いました。
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リハビリ支援ロボットとは、事故や疾病などを原因とし後遺症が残った対象者にその能力を回復させる目的で実施する訓練や療法、リハビリテーションを支援するロボットです。日本人の三大疾病に数えられている脳血管疾患(脳卒中)を例にとると、厚生労働省の調査によれば、2017年の患者数は111.5万人に上ります。発症して死を免れたとしても、重い麻痺が残り、歩けなくなったり、介護を必要としたりするケースも多いことから社会問題にもなっています。今回は、脳卒中患者のリハビリをサポートし、社会復帰を促すためのロボット「ウェルウォーク」を開発するトヨタ自動車株式会社新事業企画部の中村氏に、リハビリ支援ロボットの開発ストーリーをお伺いしました。
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今回で第36回となる、津⽥建二氏の『半導体入門講座』。最終章として、今回から3回にわたり日本半導体復活に向けた提言を書き示していきます。同氏は、半導体製造分野では衰退していった日本においてもまだ復活できる分野があるといいます。一方で、過去の失敗を明確に見極め、反省し、そして、復活の道筋をつけることが大切です。前編となる今回は、日本で半導体産業が衰退した理由を把握していきます。
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コンクリートに入ったひび割れ(クラック)をバクテリアが自動的に修復する「自己治癒コンクリート」は、オランダのデルフト工科大学で発見されました。この自己治癒コンクリートを用いることによるコンクリートの長寿命化に注目し、デルフト工科大学の研究チームが大学発スタートアップとして設立したBasilisk BVと量産技術の共同開発に着手したのが、北海道に拠点を構えるコンクリートメーカーの會澤高圧コンクリートです。本連載では、コンクリート業界の脱炭素化について注目します。前編となる今回は、同社代表取締役社長の會澤氏、常務取締役の酒井氏に、脱炭素化に向けたコンクリート業界の課題や、「自己治癒コンクリート」量産技術確立に向けた開発ストーリーに加え、本技術の導入事例についてお伺いしました。
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これまで日本の半導体メーカーが失敗した理由について、半導体のテクノロジー潮流や日本企業の特殊性に注目した分析内容をご紹介してきました。それでは、半導体産業の日本と世界の根本的な違いはどこにあるのでしょうか?今回は、半導体産業における日米の会社業態の違いに注目し、世界の半導体産業に関する分析内容をご紹介します。
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雨天時浸入水とは、本来流れ込むはずのない地下に埋設された汚水管に侵入する雨水のことです。雨天時浸入水の一例として、大雨によりマンホールから汚水が溢れ出す現象が知られています。この原因は汚水管(主にコンクリート製)の老朽化による破損ですが、地中に埋められた汚水管の破損箇所を特定するには多大なコストと労力がかかるため、補修がなかなか進まないのが現状でした。そうしたなか国土交通省は2019年「雨天時浸入水対策ガイドライン策定検討委員会」が立ち上がり、本格的な問題解決に乗り出します。今回は、同プロジェクトに参画し、AIによる音響解析を用いた下水道雨天時浸入水検知システムを開発した株式会社建設技術研究所の石川氏、鈴木氏にお話を伺いました。
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プラスチック金型とは、プラスチック製品を開発する際に必要となる金型のことです。量産する場合は、切削したりシリコン型を使ったりするよりも、金型を使用した方が精度が高く、コスト面でもメリットがあります。また、最終的な製品の用途や性能によって、プラスチックの成形方法や使用する樹脂の種類も変わりますし、それに合わせたプラスチック金型を設計しなければならないのだそうです。今回は、東京都江東区にある株式会社関東製作所に、プラスチック金型による成形方法や金型の構造、費用、注意点などの基礎知識について、話を伺いました。
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医療から自動車、環境などの多くの分野で目覚ましい発展がみられるAI(人工知能)は私たちの生活にも多くの影響を与えています。そんなAI研究に世界的に高い水準で取り組んでいるとされるのが米国や中国で、日本はそういったAI先進国と言われる国々と比較して後れを取っていると表現されることがあります。日本はAI技術を発展させるにあたり、人材の確保や研究体制の確立など多くの課題を抱えています。今回は2021年の現在、日本政府がAI技術発展のためにどのような政策を進めているのか、またすでにAI技術を導入している企業はどのように活用しているのか8つ事例と共に紹介します。
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自動車産業は100年に一度の大変革を迎えるといわれており、世界各国で自動運転などの技術開発が活発に行われています。日本でも各自動車メーカーが自動運転システムを搭載した自動車の開発を進めているだけでなく、国としても力を注いでいる分野でもあります。自動運転が普及すると交通事故、渋滞の低減だけでなく物流や新たなサービスの提供など様々な効果が期待されていますが、現在の自動運転はどこまで進んでいるのでしょうか。日本、世界の6つの事例から自動運転の最新動向をご紹介します。
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鉄鋼と聞くと鉄(Fe)をイメージする方も多いと思いますが、鉄鋼は鉄を主成分とした合金で、鉄とは異なる金属材料です。強度が高く、加工性に優れるなどの特徴からものづくりには欠かせない鉄鋼。今回は、みんさく編集部が、ものづくりに携わる人が最低限知っておくべき鉄鋼の基礎、鉄と鋼の違い、特徴、種類、加工方法について簡潔に整理しました。鉄鋼を使うことになった、ものづくり現場への配属が決定したなど、鉄鋼について改めておさらいしたい方は、ぜひご一読ください。
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サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、連鎖的につながる調達、製造、在庫管理、販売、物流といったプロセス全体(サプライチェーン)を見直すことで、効率化と最適化を行う経営管理手法のことです。昨今グローバル化をはじめとしたビジネス環境の変化によりその重要性が高まっています。さらに、2020年から始まった新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な流行により、世界各国にまたがるサプライチェーンの品質管理が課題として浮上してきています。本記事では、サプライヤ品質サービスを展開する株式会社日立ハイテクの協力のもと、サプライチェーンマネジメントの概要と一連のプロセス、品質改善事例をご紹介いたします。
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海洋プラスチックは、海洋に流入したプラスチックの浮遊ごみやマイクロプラスチックと呼ばれる5mm以下の微細なプラスチックの総称です。海洋プラスチックが注目される背景として、海上に漂う分解されにくいプラスチックが海の生物に付着したり、体内に取り込まれたりしたことが確認されたため、海の生態系に深刻な影響を及ぼす懸念がクローズアップされました。このような状況下において、海洋プラスチックや油などの浮遊ごみを回収するドローンJELLYFISHBOTを開発したフランスのスタートアップIADYS(アイァディーズ)は、これまでに157万ユーロ(約2億円)の資金調達に成功しています。今回は、IADYS創業者でJELLYFISHBOTの開発者であるNicolas Carlési(以下ニコラス)氏に、開発した水上ドローンの概要や世界各地での実証実験の状況についてお伺いしました。
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物流ロボットとは、物流現場における「ピッキング」や「仕分け」といった業務を担うロボットであり、完全無人の環境下だけでなく、人との協働を行うものも存在します。多忙を極める物流の現場では、大量の荷物を効率よく運ぶために欠かせないものが格子状の台車「カゴ台車」が普及していますが、搬送に人手がいることや人身事故の発生といった課題を抱えていました。物流システムを扱う株式会社オカムラは、物流倉庫などでカゴ台車を掴んで搬送する自律走行搬送ロボットを開発しています。今回は、物流システム事業本部の山崎氏、田中氏に、同社が手がけるSLAM技術とAIの組み合わせでカゴ車を自動搬送する自律移動ロボットの開発ストーリーをお伺いました。
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納品スピードと品質。どちらも顧客から要望の多いものですが、それらを両立させるには技術と経験が必要になります。部品や製造装置の製造を行う株式会社グローバルマシーンは、特急品に関するスピーディーな対応が強みです。また、精度高く仕上げることができるため、顧客からの信頼も厚いと言います。今回は、山形県東田川郡にある株式会社グローバルマシーンに、スピード対応の秘訣や仕事をする上で大切にしていることなどについて話を伺いました。
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これまでトップ企業とも言えるArmの成り立ち、IBMのビジネスの変遷、単なるコンピュータメーカーから半導体まで製造しはじめたAppleに注目して、その生き残り策とも言える戦略を簡単にご紹介してきました。一方で、なぜ日本の半導体産業は、ほとんどが生き残れなかったのでしょうか。日本の半導体メーカーが失敗した理由について、半導体のテクノロジー潮流や日本企業の特殊性に注目した分析内容を紹介します。
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物流支援ロボットは、人手不足が顕著となっている物流業界の省人化・効率化をめざし開発されたロボットです。自動車やロボットの自動運転技術を開発してきた株式会社ZMPは、人の移動だけでなく、物の移動も自動化するために2014年に物流支援ロボットの「CarriRo(R)(キャリロ)」を開発しました。同ロボットはコロナ禍による物流需要の高まりや、省人化の取り組みに対する関心の高まりから、倉庫や工場での導入が増えていると言います。今回は、株式会社ZMPのCarriRo事業部長笠置氏に、物流支援ロボットの開発背景や特徴、種類について詳しくお伺いしました。
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日用品や工業製品など幅広く使用され、あらゆる業界のものづくりを支えているゴム製品。精度の高いゴム加工を行うためには、使用用途や材質に対する適切な知識と加工技術が求められます。今回は、切削加工、ウォータージェット加工などをはじめとしたさまざまなゴム加工を行っている大阪府にある亜木津工業株式会社にゴム加工で失敗しないために知っておくべきことについてお話を伺いました。
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脱炭素社会の実現に向けて「水素エネルギー」の活用に注目し、産学官からの水素エネルギーに関する取り組みを紹介していく本連載。CO₂フリー水素は、水素の製造工程でCO₂排出を抑えたブルー水素の一種であり、具体的には原料となる水や石炭から複数種類のガスを取り出し(ガス化)、CO₂のガスは大気中に放出されないよう分離・回収し、H₂のガス精製を行う工程で製造されます。第11回目は、化石燃料由来のCO₂フリー水素製造・供給・利用の商用化を目指す電源開発株式会社(J-POWER)の取り組みに注目し、同社が進める2つの実証試験、石炭を輸入し国内でCO₂フリー水素を製造するプロジェクト、産炭国でCO₂フリー水素を製造し日本に輸送するプロジェクトについてお話を伺いました。
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再生可能エネルギーの中で大きな割合を占めている太陽エネルギーに注目し、日本太陽エネルギー学会の監修により基礎解説をしていく本連載。最終回となる第10回目は、日本における再生可能エネルギーの導入ポテンシャルを紹介します。再生可能エネルギーの導入ポテンシャルとは、現在の技術水準では利用困難なものや法令・土地用途などによる制約があるものを除き、賦存量の中で利用可能とみなせる再生可能エネルギーの潜在的な量を意味します。今回は、環境庁の再生可能エネルギー情報提供システム(PEPOS)のデータを基に導入ポテンシャルを把握するとともに、これから日本の地域毎にどのように再エネ政策を考えていくべきか、東京農工大学工学研究院の秋澤淳教授に解説いただきました。
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金属加工の中でも難易度が高い深穴加工。現在はドリルの進化に伴って、径の50倍近い深さまで開けられるようになってきました。しかし、そこまで深い穴を開けるには、内部給油方式の特殊な機械が必要です。そのため、顧客から加工を依頼されても断らざるを得ないケースも多いのだと言います。そんな状況を打破すべく、特殊な機械がなくても径の20倍近い深穴加工を可能にするドリル「Crea Borer(以下、クレアボーラー)」を開発したのが西研株式会社です。今回は、広島県広島市にある西研株式会社に深穴加工の注意点や加工時のコツなどについて話を伺いました。
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沖縄科学技術大学院大学(OIST)で超伝導方式の量子コンピュータにおける周辺ハードウェアの研究開発を行う久保氏に、最近の量子コンピュータ研究開発状況を伺う本連載。量子コンピュータの測定の際に利用されるマイクロ波信号はエネルギーが極めて小さく、低温で効率良く信号を増幅する増幅器が必要になると言います。後編では、同氏が研究開発を進めるスピンメーザー増幅器の原理や、その開発ストーリーについてお話を伺いました。
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量子コンピュータとは、原子や電子、分子といったミクロな粒子の状態や挙動を説明する理論である量子力学の特徴を巧みに利用して動作するコンピュータです。量子コンピュータは、従来のトランジスタ・コンピュータでは計算に膨大な時間がかかっていた問題を早く解ける特徴が注目され、高機能材料や薬品などの物質探索やシミュレーション、機械学習などへの活用が期待されています。本連載では、沖縄科学技術大学院大学(OIST)で行われている量子コンピュータの研究開発に注目します。今回は、超伝導方式の量子コンピュータの周辺ハードウェア技術の研究開発を行うOISTの久保氏に、量子コンピュータの種類や原理、仕組みについてご解説頂きました。
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透明太陽電池とは、既存の太陽電池が約400〜1,200nmの波長の可視光線を含む光を吸収して発電するのに対し、可視光線の多くは透過させ、可視光線外にある赤外線(IR)と紫外線(UV)を使って発電するため透明に見える太陽電池です。透明太陽電池の基礎技術を開発した米国のスタートアップ企業ユビキタスエナジーは、透明な窓ガラスでの太陽光発電の研究開発を進めており、その重要なパートナーを務めているのがガラスメーカーである日本板硝子株式会社です。今回は、日本板硝子ビルディングプロダクツ株式会社の清原氏に、透明太陽電池が拡げる窓ガラスの可能性についてお話を伺いました。
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土木金物といえば、ガードレールをはじめとする防護柵やトンネル、土砂崩れ防止のためのライナープレートなど、私たちの生活を陰ながら支えてくれているものです。インフラの一部であるため、強度などを含めた高品質を担保しながら、迅速な大量生産が求められます。今回は、大阪府八尾市にある株式会社天徳工業に、大型の土木金物の量産品を高品質、短納期、ローコストで手掛ける秘訣について話を伺いました。
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熊本大学が研究開発を進める「パルスパワー」を紹介する本連載。熊本大学が研究開発を進める「パルスパワー」はアニサキスの殺虫だけでなく、コンクリートの減容化にも使われています。コンクリートの減容化とは、コンクリートを構成する「骨材」と「セメント」を破砕・分解することで廃棄物などの容積を減少させることです。高精度な減容化が実現できれば品質の高い再生骨材を生産できるため、最終処分材(産廃物)の削減にも寄与し、コンクリートの再利用、すなわちリサイクルにも貢献することが期待できます。後編では、前編に引き続き熊本大学の浪平准教授氏に、パルスパワーによるコンクリート塊の骨材再生処理技術についてお伺いします。
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アニサキスは、主に食用の魚介類に付着する寄生虫(線虫類)の一種です。アニサキスが人の胃に刺入することによって引き起こされる食中毒「アニサキス食中毒」は、厚生労働省が発表した「令和元年食中毒発生状況の概要」によると近年増加傾向にあり、食中毒原因の第1位となっています。これまでのアニサキス対策といえば冷凍・加熱が良く知られていましたが、「パルスパワー」という電気的なアニサキス殺虫方法を開発したのが熊本大学産業ナノマテリアル研究所と株式会社ジャパン・シーフーズらの共同研究グループです。本連載では、熊本大学が研究開発を進めるパルスパワーの活用に注目します。前編となる今回は、熊本大学産業ナノマテリアル研究所の浪平准教授氏に、パルスパワーを応用したアニサキス殺虫装置の開発ストーリーついてお伺いします。
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機械や器具類の組み立てに欠かせない部品。その製造には、精度の高い加工技術と徹底した工程管理が必要になるといいます。質の高い部品加工を行うために、具体的にどのようなことに注意しなければならないのか。今回は、東京都葛飾区にある「流体制御機器」の部品加工で技術を培ってきた三正工業株式会社に、部品加工のポイントや加工の流れなどについてお話を伺いました。
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LNG(液化天然ガス)は、天然ガスを超低温で冷却し無色透明な液体としたものです。液化の際に体積の600分の1となる特徴を活かし、大量のLNGがLNGタンカーにより海上輸送されています。LNGは蒸発して天然ガスに戻る(再ガス化)の際に、周囲から熱を奪い冷却する現象「冷熱」が生じます。この冷熱利用で注目されているFSRU(浮体式LNG貯蔵再ガス化設備)です。FSRUは、洋上でLNGを受け入れてタンクに貯蔵し、必要に応じてLNGを温めて再ガス化した高圧ガスを陸上パイプラインに送出する浮体式設備です。今回は、LNG導入の低コスト、短期間での実現を目指すFSRUプロジェクトを手掛ける商船三井の近藤氏、中山氏および岡氏に、プロジェクト開発のお話を伺いました。
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スーパーコンピューターの民間利用は、主に科学技術計算用途で大規模かつ高速な計算を行うスーパーコンピューターの計算資源を中小企業などの民間において産業利用する取組みです。公益財団法人計算科学振興財団は、産業利用向けのスーパーコンピューターを持ち、民間利用の普及活動を行っています。今回は、製品開発などのものづくりにおけるスーパーコンピューター活用に注目し、計算科学振興財団に中小企業での利用例や課題を伺いました。
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顧客のニーズに合わせて開発するカスタム電源。近年は、半導体やバッテリーの進化によって小型化や高効率化、低ノイズ化が実現できるようになってきました。また、EV化が進むにつれて、従来のエンジン機構における代替として、パワーエレクトロニクスであるモーターやインバータ、バッテリーの充放電機器の必要性が高まるなど、カスタム電源の市場は環境問題への対応と高性能化が合わさって時代とともに変化しています。今回は、群馬県藤岡市にあるさまざまなカスタム電源の受託開発に取り組んでいるポニー電機株式会社に、カスタム電源のメリット・デメリットや依頼の際の注意点などについてお話を伺いました。
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バイオセミラックス3Dプリンターの研究開発内容を紹介する本連載。バイオセラミックスは、人体に対する毒性がなく、生体組織への親和性が高く、かつ体内において高い耐久性を有する生体機能を代行するセラミックスであり、人工骨や人工関節、歯、歯根などに使われています。2018年、株式会社リコーと理化学研究所は、3Dプリンターを用いた新たな人工骨の造形技術を発表しました。後編では、理化学研究所のスタッフとして協力していた名古屋大学病院の整形外科医の大山慎太郎氏に、医師としての共同研究への関わり方や同技術が患者にもたらす価値、およびバイオセミラックス3Dプリンターによる人工骨造形技術応用の可能性についてお伺いします。
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人工骨は、病気や外傷で欠損した骨を補うために開発された人工的な素材です。人工骨の材料として、人体に対する毒性がなく、生体組織への親和性が高く、かつ体内において高い耐久性を有する生体機能を代行するセラミックスである「バイオセラミックス」が知られています。2018年、株式会社リコーと理化学研究所は、3Dプリンターを用いた新たな人工骨の造形技術を発表しました。本連載では、バイオセミラックス3Dプリンターに注目します。前編となる今回は、リコーで中心的に本プロジェクトを実施している渡邉政樹氏に、人工骨が必要とされる骨移植手術の現状と課題、および人工骨で注目すべき骨置換性を高める材料と構造についてお伺いします。
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イメージ図や図面に落としたものを、実際に製品化していく。その過程には、加工に関する非常に多くの知識と技術、経験が必要になります。埼玉県川口市に本社を構える株式会社相馬製作所は、薄板鋼板の加工を中心とした精密プレスと板金加工の会社です。幅広いジャンルの企業約140社との取引経験から得たノウハウを生かし、設計者やデザイナーのさまざまな「作りたい」に応えています。今回は相馬製作所に、製品化するために必要な技術力や対応力についてお話を伺いました。
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モノづくり現場でのスーパーコンピューター「富岳」活用について、「富岳」研究チームを率いる理化学研究所計算科学研究センター坪倉誠氏にお話を伺う本連載。ハイパフォーマンスコンピューティングの課題解決のため、遺伝的アルゴリズムやAIの活用、独自ソフトウェア「複雑現象統一的解法CUBE」の開発を進めてきた「富岳」。後編では、研究事例としてAIを使ったサロゲート・モデルやCUBEを使ったトポロジー最適化を紹介頂き、今後のモノづくり現場でのハイパーコンピューティングの使われ方についてお話を伺いました。
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モノづくり現場でのスーパーコンピューター「富岳」活用について、「富岳」研究チームを率いる理化学研究所計算科学研究センター坪倉誠氏にお話を伺う本連載。スーパーコンピューターが威力を発揮するハイパフォーマンスコンピューティングだからこそ、高精度な計算を行う際に時間的コストが掛かってしまう課題があるといいます。中編では、この時間的コストが掛かってしまうCADデータ修正や最適曲面の探索に対する課題解決アプローチや残された課題についてお話を伺いました。
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スーパーコンピューターとは、科学技術計算用途にて大規模かつ高速な計算が要求されるハイパフォーマンスコンピューティングに用いられる電子計算機です。日本では2019年8月に役割を終えた「京」がスーパーコンピューターとして有名ですが、「富岳」は「京」の後継機として理化学研究所と富士通により開発され2021年3月に共用が開始されました。今回は、モノづくり現場でのスーパーコンピューター「富岳」活用に注目し、理化学研究所計算科学研究センター複雑現象統一的解法研究チームの坪倉誠氏に話を伺いました。前編では、スーパーコンピューター「富岳」がモノづくりにもたらす3つの変化や、企業とのコンソーシアム活動の概要についてご紹介します。
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焼付塗装とは、塗料を塗って乾燥炉に入れ、100度以上の高温で加熱して塗料を硬化させる塗装方法で、耐候性・耐薬品性・耐磨耗性が高く、剥がれにくいといった特徴があります。塗装をする上で剥がれは一番大きな問題ですが、剥がれを防ぐには下処理や適正な温度帯での焼き付けなど、きちんとした工程を踏むことが大切だと言います。今回は、知県名古屋市に本社を構える焼付塗装と精密板金加工の会社である株式会社ミヤモトに焼付塗装のポイントについてお話を伺いました。
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遠隔医療ものづくり技術の最新動向について医療現場からの声をもとに紹介する本連載。第11回は、引き続きデジタルパソロジー」について紹介します。遠隔診療は、コロナ禍や医師不足、地方の過疎化、高齢化が進むなか注目が集まっていますが、その中でも患者の細胞を顕微鏡で観察して病状を診断する「病理医」の業務を遠隔化する「テレパソロジー(遠隔病理診断)」にもデジタルパソロジーが大きく関わっています。今回は、実際にデジタルパソロジーを利用している病理医であり、その普及を推進するデジタルパソロジー研究会会長の長崎大学大学福岡順也教授に、医療現場の課題やデジタルパソロジーの在り方、普及のために欠かせない視点を伺いました。
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デジタルパソロジーとは、病理標本を専用スキャナで撮影してデジタル化することで病理診断をサポートする技術です。デジタルパソロジーは、保存したデータをいつでも見られるようにできること、ネットワーク等を介して他者と共有できること、コンピュータ分析などに活用できること、といったメリットに加え、テレパソロジー(遠隔病理診断)としての利用が期待されています。今回は、医療機器として認証されたデジタルパソロジーシステムを開発している株式会社フィリップス・ジャパンに、同社の製品サービスの開発背景や概要、導入事例についてお話を伺いました。
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受託研究開発は、機械や施設、研究員を自社で用意する必要がないので、開発にかかるコストの大幅削減を実現することができます。また、それだけでなく自社では解決できない課題に直面したとき、自社にはない技術を持った外部に委託することで、他の解決方法を試すことができるそうです。今回は、愛知県瀬戸市にあるセラミックスメーカーの合資会社マルワイ矢野製陶所に受託研究開発の強みや長所についてお話を伺いました。
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1980年代後半から1990年初めにかけて日本に負けた米国がどうやって回復したのか、米国企業を取材すると、その経営戦略は筋が通っていました。前回は、世界的な半導体企業、研究機関3社(Texas Instruments・Onsemi・imec)に注目し、半導体ビジネスで世界を牽引する企業が、衰退していった日本の企業となにが違い、なぜ強くなっていったのかを見ていきました。今回は、引き続き日本の半導体産業とはまったく異なるやり方で成長する世界的な半導体企業3社(Arm・IBM・Apple)の経営戦略を紹介します。